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第8話 ぽんこつアンドロイドは女子更衣室に突貫するか? ~謎解明編~

「ふぅ……やれやれだぜ」




 全てを思い出した俺は、ニヒルな笑みを浮かべながら小さく肩を竦めてみせた。


 無論、全裸のままで。


 そんなある意味で野生を解放しているナイスガイな俺のボディーを、舐めるように見つめ続ける下着姿の現役女子校生たち。


 マリア様が居るということは、ここは恐らく1年生の教室なのだろう。


 みな、どこか幼さを残したあどけない可愛らしい顔をしていた。


 それにしても……このたちは痴女の卵か何かなのだろうか?


 健康的で柔らかそうな肌に食い込むブラジャーやショーツを隠すことなく、むしろ「見てくれ!」と言わんばかりアマゾネススタイルで堂々と俺に見せつけてくるお嬢様たち。


 もう男をよろこばせる気満々じゃないか!


 誰にも触れられたことがない、シミ一つない肌に食い込むピチピチのパンツが目に眩しい。


 幼さが残る顔つきのくせに、プリッ♪ としたお尻に、昨今の日本の欧米化の影響か、たゆん♪ と豊かに盛り上がっている胸部。


 その中身は子ども、見た目はオトナというアンバランスさが何とも言えないカタルシスを与えてくれて……なんだこの娘たちは? 俺を誘っているのか?


 おまけに何だ、この教室の湿度の高さは?


 おそらく体育の後だと思うのだが、教室全体がその、女の子の体臭というか、汗の匂いに満ち満ちていて……うん、悪くない。全然悪くない。


 何なら深呼吸の回数が増えるくらいだ。


 こう一糸まとわぬ姿で女の子の甘い匂いに囲まれていると、目を閉じた瞬間、酒池肉林の気分を味わうことが出来て最高だよね!


 なんて言うの? 明日への活力というか、そういうモノがムクムクと……。




 ――むくむく……ビキビキッ!




『『『『ひぃぃっ!?』』』』




 俺の思考が一瞬だけ異世界へと飛んでいる間に、お嬢様たちが小さな悲鳴をあげた。


 なんだ、なんだ? 


 何事だ? と思い、俺はゆっくりと閉じていた瞳を見開いた。


 そこには青い顔を浮かべて震える娘や、頬を赤らめ口をパクパクさせている娘、両手で顔を隠しながらも指の隙間から俺をガン見している娘たちが居た。


 みな食い入るように俺を……俺の下半身を凝視していた。


 はて? と首を捻りながら彼女たちの視線を追うように下半身に意識を向ける。


 そこには。




『む、ムクムクって!? ムクムクって!?』

『え、エイリアン……ッ!?』

『嘘……たっ君よりも大きい……ッ!?』

『ぐ、グロイよぉぉぉ~ッッ!?!?』

『ぶ、ブラブラがムクムクに……男の人ってみんなあぁなの!?』

「げ、下郎ッ!? な、なんじゃソレは!?」




 マリア様のどこか叱責しっせきするような声音が股間を揺らす。


 俺と彼女たちの視線の先、そこには――ロミオ・アンドウ作『バベルの塔』が絶賛建築されていた。


 ベッチィィィィィン! とりに返り過ぎて、俺のお腹を何度も叩くじゃじゃ馬ムスコを前に、お嬢様たちが『ひぇっ!?』と小さな悲鳴をあげる。


 普通こんな状況ならショボくれて小さくなって回避率をあげてくれてもいいようなモノなのに……もう凄いぞ?


 お嬢様たちの視線が突き刺さるたびに「おっ? 仕事か?」と我がムスコが俄然がぜんやる気を出してしまい、余計にムクムクというか、ビキビキしてしまい……。




『う、嘘っ!? ま、まだ大きくなるの!?』

『ビクンビクンしてる! ビクンビクンしてるよ!?』

『あ、あんなに大きくして……痛くないのかしら?』

「げ、下郎ッ! は、はよぅソレを何とかせんか!」




 衆人観衆の前で過去最大仰角ぎょうかくの最高膨張へと達してしまう我が息子。


 もはや股間でト●ロが何かやってんだろ? って、疑いたくなるレベルの急成長だ。


 そんなサ●キとメ●が我が息子の前で屈伸しているであろう有様を前に、マリア様が上ずった声音で叱責してくる。


 俺は慌てて息子をたしなめようと心の中で声をかけるのだが……100%、110%、120%――ダメですっ! 暴走止まりません!


 もしここに我が叔父、大神士狼さんが居たならば、




『さぁみんな、オジさんが手品マジックを見せてあげるね? オジさんのお股に注目だぁ! ほぅら……おっきくなっちゃた!』




 と、この世における最底辺の1発ギャグをぶちこみ、白と黒のツートンカラーで出来た最高にファッショナブルな車に乗ってお帰りいただいたに違いない。


 もちろん俺はそんな非常識なコトをする男ではない。


 俺はマリア様たちを安心させるべく、爽やかな笑みを浮かべながら頭を下げた。




「申し訳ありません、お嬢様方。どうやら自分の息子が大変な粗相そそうをしてしまったらしくて……ほら、おまえも謝るんだ」

『うんパパ。ごめんなさい(ロミオ裏声)』

「『『『『…………』』』』」




 腹話術の要領で疑似的に我が息子をお嬢様たちに謝らせる。


 息子も反省しているのか、頭を下げるように小刻みにビクビク前後に揺れていた。


 礼儀正しい息子で助かる♪




「ところでマリア様? マリア様たちは1限目は体育だったんですか?」

「う、うむ。ワルツの練習をしておった……って、え? あ、あれ?」




 俺があまりにも堂々と世間話を振ったせいか、正気に戻りつつあったマリア様が再び混乱し始める。


 よしよし、上手くいったようだ。


 俺の母親仕込みの巧みな話術により、全裸で居ることに違和感を覚えなくなり始めているお嬢様たち。


 むしろ「あれ? もしかてあの人、服着てない? 『プライド』っていう名の一張羅を!」とか思ってくれているに違いない。


 あとは流れるようにお嬢様たちの前をパリコレの如く尻をこれでもか振りたくりながら、横切るだけ――



 ――ザワッ!



「ッ!?」




 瞬間、教室のドアへ向かおうとしていた足がピタリと止まる。


 毛穴という毛穴が開き、頭の先からつま先に至るまで本能の警報音が鳴り響く。


 廊下の方から漂うこの怒気、この殺気、まさか……警備員か!?


 ば、バカ!? 


 いくら何でも早すぎる!? 


 奴はニュータイプだとでも言うのか!?




「? 下郎?」

「マリアお嬢様、ちょっと前を失礼します」




 ピクリとも動かなくなった俺を不思議に思ったのか、マリア様の声が肌を叩く。


 俺はそんなマリア様に断りを入れつつ、クルリッ! と身を反転させ、割れた窓ガラスの方へと再び歩き始めた。


 そのまま窓縁に足をかけ、下に黒服共が居ないことを確認し、1人「うん」と頷く。


 そうこうしている間にも廊下側からドタドタッ!? という足音と怒気が迫ってくる。


 グッ! と身体に力を込めた次の瞬間、1年生の教室の扉が思いっきり開いた。


 そして野太い怒声と共に、下着姿のお嬢様たちが居る教室に入ってきたのは……そう、例のゴリゴリに仕上がった警備員のオッチャンだ!


 いまだに右手に持ったライト性棒せいばーをウィンウィンと卑猥に動かしているオッチャンの瞳が俺を捉える。


 がそれよりも数秒早く、俺はオッチャンに手を振りながら窓から飛び降りていた。




「あばよ、とっつぁ~ん♪」

「待てやクソガキィィィッ!?」




 待てルパ●ンッ!? と言い出しかねないオッチャンを尻目に、俺の身体が窓へと飛び出る。


 そのまま不自由という名の自由落下に任せて、約8メートル下の地面めがけて降下スタート。


 グングン迫ってくる地面。


 それとほぼ同時に3階からお嬢様たちの悲鳴が追ってきた。




『い、いやぁぁぁぁぁっ!? ち、痴漢!? 痴漢ですかっ!?』

『ちゃ、ちゃうちゃうっ!? オッチャンはみんなを守るために――ほぅ? 黒のレースかいな……ふふっ♪ いいセンスや❤』

『『『『『ひぃぃぃぃぃっ!?!?』』』』』

『け、警備員を呼ぶのじゃ! この不届き者をすぐに追い出せ!』

『は、はいマリア様!』

『どうした!? ワシを呼んだか、お嬢ちゃん?』

『呼んどらん! 呼んでおらんわ、この変態マッチョがぁっ! すぐさま警察に突き出してやるわ!』




 覚悟するのじゃ! とマリア様の怒声と警備員のオッチャンのデレデレした声が頭上から降ってくる。


 オッチャン、きっと出会う時と場所が違えば俺たちは最高の友達に……なれないな、うん。


 我が尻穴をガバガバにしようとしている男と仲良くなれる気が微塵みじんもしなわ。




「サラバだ、オッチャン。シャバで会えたら、また会おう!」




 俺は『宿敵しゅくてき』と書いて『とも』と読む、偉大なる門番に心の中で敬礼しながら、再びセイント女学院の校内を全裸で疾走するのであった。

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