「~~~~~~~~~ッッ!?!? ぅ、ぅぇぇ……ぅぇぇぇっ」
雷鳴轟く桜屋敷のとある1室にて。
かつては物置として使っていた部屋だが、現在はこの桜屋敷のたった1人の使用人にしてアンドロイドであるロミオゲリオン専用の小部屋となった1室の隅っこに、小さな影が1つ落ちていた。
シーツに身をくるめ、捨てられた子犬のようにブルブルと震える少女――ジュリエット・フォン・モンタギューは溢れ出る涙と嗚咽を噛み殺しながら、息を殺して不安と戦っていた。
「~~~~~~ッッッ!? ふぐぅ、ふぐぅ………ッッ!?!?」
雷雲が連れてくる轟音に身体を震わせながら、耐えるように必死に唇を噛みしめる。
そこに氷のように冷たく恐ろしいモンタギュー家の次期当主の姿はない。
居るのは恐怖のあまり身体を震わせることしかできない小さな女の子が1人だけ。
何度も何度も雷が落ちるたびに、ジュリエットは何度も何度も胸のうちで同じ言葉を連呼する。
ダイジョウブ。絶対ダイジョウブ。
今までだって何とかなっていたんだ。
こんなのどうってことない。
そうだ、今まで1人でもやってこれたんだ。
これくらい何とも――
――ドォォォォォォォォォンッ! ゴロゴロ……
「ひぅっ!?」
ジュリエットの決意は一際大きな雷鳴によってあっさりと打ち砕かれた。
こ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
た、助けて!?
誰か助けて!?
気がつくと心の中で助けを求める自分と、頭の隅で『助けなんてこない』と自嘲気味に笑う自分が居た。
――助けて!?
――助けなんて来ないよ。
――助けてよ!
――今までそう願って助けが来たことがあった?
――お願い、誰か……助けて……
――諦めなって、誰も助けになんか
来ないよ、そう続くハズだったもう1人のジュリエットの台詞は、桜屋敷をドタドタと走り回る謎の存在によって掻き消された。
「ひぅっ!? だ、誰!?」
『クソッ! ここにも居ない……』
「……えっ?」
その声を耳にした瞬間、ジュリエットの瞳は
か、彼のワケない。
だってさっき彼はメンテナンスのため桜屋敷を離れたんだから。
だから違う、幻聴だ。
そう何度も自分に言い聞かせ、思いこもうとする。
……のだが。
『ここでもない。コッチでもない。お嬢様っ! ジュリエットお嬢様っ! 居るなら返事をしてください!』
幻聴にしてはハッキリと、確かな存在感をもって自分の名前を呼んでくる。
桜屋敷の扉を全部開けて回っているのだろう。
その存在がジュリエットの居る部屋のドアノブを回した瞬間、ジュリエットは弾かれたようにドアへと駆けだしていた。