ジュリエット様の妹、マリア・フォン・ジュリエットの来襲から数十分ほど経った10時少し前。
俺は本日の最後の業務である桜屋敷の見回りをするべく、暗くなった廊下を
「お風呂場も……よし。これにて本日の業務終了っと」
ジュリエット様が入ったばかりの大浴場を確認し、異常が無いことを確かめ、俺は大きく背伸びをした。
「さて、それじゃ俺も部屋に帰って簡単に身体を拭いて……うん?」
何となく脱衣所を一瞥すると、脱衣カゴの中に今日1日履きつづけたお嬢様のワインレッドの下着を発見する。
――やぁ、また会ったね?
とバーカウンターでプレイボーイが口にしているような台詞を言われたような気がして、思わずお嬢様のパンツに微笑んでしまう。
約1日ぶりの再会である。
「……誰も居ない、か」
気がつくと俺は誰も居ないことを確認するかのように辺りをキョロキョロと見渡していた。
いや別に深い意味とか無いよ?
ただ、今現在脱衣所には俺1人だけということで、それは即ち、ここで起きたアクシデントは外に漏れることはないというワケで……。
チクショウッ!?
このパンツめ!
俺にどうしろっていうんだ!?
『誰も見てないんだし、早めのクリスマスプレゼントってことでさ、この下着でちょっと遊んじゃおうぜ?』
むっ? おまえロミオ
この悪魔め……ここぞとばかりに俺を悪の道へ引きずりこもうとしているな?
舐めるなよ悪魔? 俺は
俺の正義の心が悪に屈することはない!
そんな俺の気持ちに呼応するかのようにロミオ
『別に遊んでもいいんじゃないかなぁ?』
「――お嬢様の力……お借りしますっ!」
ロミオ天使に背中を押され、まるで光の戦士のようなことを口走りながら、俺は何ら
朝の
俺はこの世ならざるパンテェーの触り心地にうっとり♪ しながら、感嘆のため息をこぼしてしまう。
世の女性たちはこんな大胆不敵な秘密をスカートの下に隠して生活していたのか……。
おいおい、矢吹丈もビックリのノーガード戦法じゃねぇか!?
スカートの下は暴れん坊将軍かい? 松平健かい!?
「へへっ、パンテェーを持つ指先が震えやがる……これが武者震いってヤツか」
おそらく、これから俺がしようとしていることが分かるか否かで『天才』か『変態』かが分かるというものだろう。
そう、俺と同様に天才ならばこれから行われる神聖極まりない儀式についてもすぐに分かるハズだ!
俺は震える指先でゆっくりとお嬢様のパンテェー(ワインレッド)を広げながら、天高く
――さぁ、
俺は「パイルダー……オンっ!」の掛け声と共にお嬢様のパンテェーを今、頭から……被った! 被ったぞぉぉぉぉぉぉっ!
「フフッ、やった、ついにやったぞ! 漫画とかでよく見るパンテェーの被り方だが、実際にこんな被り方をしている人間が世界にどれだけ居るだろうか?」
そう考えたら生まれて18年と半年、ずっとゴミカス同然のような生活を送っていた俺は、今、間違いなく同世代が追いつけもしない遥か高みへと足を踏み入れたのかもしれない。
もしかしたら、コレが神の1手なのかもしれない。
おいおい? あの藤井聡太8段すら追い越して、神の領域に足を踏み入れてしまったのか、俺は!?
「それにしても……パンテェーを被ってからというもの、なんだこの溢れんばかりのパワーは?」
まるで細胞1つ1つが歓喜に打ち震えているような……圧倒的なまでの万能感、及び明日への活力。
な、なんなんだコレは?
ストレッチパワーか?
気を抜くと下半身から何かが爆発してしまいそうだ!
「今にもはち切れんばかりのパワーだというのに、心は凪のように穏やかだ……もしやこれが伝説のスーパー地球人の力か? 今なら脱衣所の天井どころか光る雲すらぶち抜いてドラゴン的なボールを探し回ってスパーキング出来るんじゃ……ん? 脱衣所? ……ハッ、そうか!?」
そう、今俺が立っている場所は脱衣所なのだ。
脱衣所とは文字通り、衣服を脱ぐ場所なのだ。
それはつまり、今、この場で執事服をキャストオフしても何ら問題はないということで。
ロミオ・アンドウの神秘を大公開しても何ら問題ないということだ!
「むしろ服を脱がないのはマナー違反とさえ言ってもいいだろう」
光る雲をぶち抜いてアイヤイヤイヤイヤーしている場合じゃないっ!
さぁ、みんな想像してごらん?
全裸のナイスバディなお兄さんが頭に美少女のパンティーを装着して「お~けぇ~いっ! どうもぉ~、安堂ロミオでぇ~す♪」と満面の笑みで激しく腰を前後に動かしている姿を。
美少女のお屋敷で、美少女のパンテェーを頭に被り、激しく腰を振る男……もはや完全に神話として語り継がれるレベルの偉業だ。なんなら歴史の教科書に載ってもいいレベルの、ね。
「……ふぃぃ~、なんだか下半身が暑いなぁ」
気になりだしたら試してガッテン♪ してみたくなるのが男の子というもの。
俺は己の中に眠る
「――ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!?!?」
瞬間、桜屋敷に乙女の悲鳴が響き渡った。