世界でも5本の指に入るほどの大貴族にして、その資産は世界全体で見て数%にも及ぶと言われている大財閥――モンタギュー家。
『裏で世界を操っている』とさえ言われているそんな大財閥の現当主、テレシア・フォン・モンタギュー。
『血も涙もない超合理的人間』だとか『感情を無くした女帝』だとか悪い噂もことかかない彼女だが、その手腕は本物らしく、彼女がモンタギュー家の当主になってからというもの、彼女がスポンサーになった企業、団体、商品は目覚ましい飛躍を遂げる『幸運の女神』という2つ名もあるくらいだ。
そしてそんなモンタギュー家の現当主様は大の温泉好きのようで「天然温泉のついた家に住みたい!」という至極個人的な理由だけで本籍どころか本社さえも日本へ移した超趣味人でもあるらしい。
そんな超絶趣味人な彼女には2人の娘が居る。
そのうちの1人が今年17歳になるジュリエット・フォン・モンタギューである。
モンタギュー家の正統後継者である彼女は、一言で言えば完璧超人であった。
まるで外国の童話から出て来たお姫様のような愛らしい顔つき。
太陽の光を一身に浴びた小金色に輝く髪。
どこまでも透き通る蒼い瞳に、メープルシロップに漬けたかのような潤んだ唇。
お人形さんのような小さな出で立ちに反して、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるプロポーション。
街を歩けば100人が100人とも確実にナンパ、もしくはスカウトするほどの美貌を持つ彼女だが、彼女の真価はそれだけにとどまらない。
日本有数のお嬢さま学校である私立セイント女学院を首席で入学し、今日に至るまで2位と圧倒的な差をつけて1位に君臨している才女である。
加えて教養もあり、ピアノを弾けばスタンディングオベーション、歌声は天上の囁き、走れば国体出場等々。
もはや天は二物を与えないどころか「もしかして異世界から転生してきた?」とコチラが疑問を抱くレベルでの才能の暴力に、ただただ賞賛を送ることしか出来ない。
そんな才能の見本市どころか天上の存在である彼女と、全日本イケメン代表みたいな俺、
なんなら生きる世界どころか遺伝子レベルで違うと言ってもいいだろう。
顔面以外さして長所もなければ特技もない平凡な俺と、生まれながらにして勝利が約束されている彼女の人生は決して交わることがない。
……ハズだった。
そうハズだったのだ。
一体何の因果が、はたまた神様の小粋なイタズラかは知らないが、俺と彼女の物語がこのあとトンデモナイ勢いで
これはジュリエット・フォン・モンタギューの物語でも
これは人間を信じられなくなった女の子と、光源氏も裸足で逃げ出すイケメンロボット(仮)が織りなす、絆と想いと……再生の物語だ。