獣は小さく唸り、今までの失敗を思い返していた。
南北に別れている国の一つを手中に入れる作戦は、ブラドナーを名乗る男のせいで失敗に終わった。
――跡継ぎ亡き、後釜を据える男の失敗。
魔族の核を手に入れ、宝石に研磨する際にまさかの紛失。
魔族の核は新たなものが生成されるまで、何十年――いや、何百年も掛かるかもしれなくなった……。
――この世界の流通をコントロールしていた男だからこそ、信頼した失敗。
「このままにはして置けない……」
獣は小さく唸る。
「また人間に造らせなければならないのだ……」
獣は動き出していた。意のままに動かせない中心の人物を、権力と金に目のくらんだ同じ人間に殺させた。
更に宝物の解放と共にドラゴンヘッドにはない伝説の武器の作製方法を記した本を紛れ込ませた。宝物の回収が再び行なわれれば、自然となかった本が紛れ込む手筈だ。
「遠回りになるが、サウス・ドラゴンヘッドを手に入れることから始めよう……」
残りは、僅かに残った従えない者達を処分するだけだ。
獣は度重なる失敗に苛立ちながらも、慎重に事を運んでいた。