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作製編  60 【強制終了版】

 ドラゴンウィングの王都の滞在期間は、アルスとリースの旅の路銀を蓄えるまでになる。エリシス、ユリシスの賞金首を捕まえての臨時収入はあるにしろ、それは本来ならエリシス達の旅の路銀だ。それ以外の二人がただ加われば、エリシス達の旅の蓄えはなくなってしまう。パーティ全体のバランスを考えるなら、仕方のないことだった。


 …


 王都に滞在して四日目――。

 鍛冶屋の主人に優先させて貰って造っていた、グリースのロングダガーが完成した。

「店で一番質のいい鉄鉱石を使わせて貰ったよ」

「我が侭を言って悪かったな」

「バランス、強度、切れ味……。全て君の注文通りのはずだ」

 グリースはアルスからロングダガーを受け取ると、早速、試しに振ってみる。

「やっぱり、少し重いな」

「練習すれば慣れるし、必要な筋肉もつくはずだよ」

「ああ」

 グリースは王族に伝わるナイフ術の型を幾つか試し、確認を続ける。

「いいな……」

「問題なさそうかな?」

「アルス、感謝するよ」

「うん」

 アルスは、もう一つの気になっていたことを聞く。

「それで、話し合った結果、どうだったの?」

「爺ちゃんが、オレとそっくりだったのが判明したよ」

「そうなんだ」

「あの大人しそうな爺ちゃんが家出をしたなんて信じられなかったよ」

「その人に歴史ありだね」

「ああ。――今度、親父とも話してみるつもりだ」

「大丈夫?」

「リースと同じ方法を取ってみるよ」

「はは……。王様に同属の被害者意識を持ちそう……」

 グリースは声を出して笑い、アルスは苦笑いを浮かべた。

「アルスは、あと、どれぐらい居られるんだ?」

「ここの鍛冶屋の大きな仕事が一段落ついたら。二、三日かな?」

「そうか……。いい友達が出来たんだがな」

「僕以外にも沢山作ればいいじゃない?」

「オレ、王族の子だから、皆、一歩退くんだよな」

「そこもリースを見習えば? 実際、リースには声を掛けれたんだし」

「あの子は短剣のことを気にしてたから、話す切っ掛けがあっただけだよ」

「普通の子は持ち歩かないものか……」

 アルスがチョコチョコと頬を掻きながら『参考にならないか』と呟くと、グリースはリースを思い出しながら声に出す。

「でも、あの何でも言えるところはいいな」

「言えるようになってきたって感じればいいのかな?」

「ん?」

「ごめん、独り言」

(僕達も初めから何でも言えたんじゃないんだ。少しずつ話せるようになったんだ)

 アルスはリースとの会話が、本当の家族のように感じていた。それだけ、二人の関係は親子に近づいたということだろう。

(親子じゃなくて兄妹か……)

 アルスは軽く笑う。

「僕は仕事に戻るよ」

「オレは城で勉強だ」

「大変だね」

 グリースは振り返りながら言葉を漏らす。

「少しやる気が出てきたんだ――」

 グリースが何を言ったか分からず、アルスは首を傾げる。

(――お前達みたいな奴が居るなら、そいつらのために、王になるための勉強をしてもいいなってな)

 グリースは軽く手を振ると鍛冶屋を後にした。

「出会いって不思議なんだな。話しただけで、その人の人生観が少し変わるんだ」

 イオルクに旅に出ることを勧められたのがよかったと、アルスは強く思えた。

(この旅は、僕を見詰めてお爺ちゃんの足跡を辿る旅……。だけど、新しい出会いや出来事が加わって、色んな意味が込められていく……。この旅を終えた時、僕はどんなものを手に入れるんだろう?)

 鍛冶屋の仕事に戻り、アルスは職人達に混じって一生懸命に働いた。

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