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作製編  48 【強制終了版】

 一方のアルスは霧に覆われた山を登り切り、エルフの隠れ里へと到着していた。

 出迎えたのは皺が刻まれた顔の老人。しかし、背筋は真っ直ぐ、髪も白髪に変わるところがなく茶髪を保ち、服はエルフ達が着る服と同じデザインのものだ。

「久しぶりだな、アルス」

「クリスさん……」

「イオルクの馬鹿は、一緒じゃないのか?」

「はい……」

「どうしたんだ?」

「……亡くなったんです」

「嘘だろ?」

「本当です……」

 アルスの言葉に、クリスは暫し言葉を止めた。

「病気か? それとも、誰かに殺されたのか?」

「寿命です」

「そうか……、そうだよな。アイツは、誰にも負けるような奴じゃねぇからな」

「はい」

 アルスは左腿に当たるメイスに手を掛ける。

「お爺ちゃんの最後に造った武器です」

 アルスはメイスを地面に置いてロックを外すと鞘が開き、本来の姿を現わす。

「もしかして……、オリハルコンで出来ているのか?」

「はい」

 クリスは地面に胡坐を掻いて直に座る。

「手に取ってもいいか?」

「やめておいた方がいいと思います。お爺ちゃんの家族の人達は、危なさに気付いて触れませんでした。クリスさんは、それに気付いてないみたいですから」

「……なるほどね。武器の扱いに長けている者か、武器を造れる者にしか分からないってことか」

 クリスは仕方なく納得する。

「これは、それほどのものなのか?」

「はい」

 頭に手を当て、クリスは大きく息を吐く。

「イオルクじゃなくて、アルスの言葉なら信じた方がいいな。従うよ。――だけど、素人目から見ても凄いのが分かるぜ。店で売られてる新品の剣よりも光って見える」

「そこは変わらないかと……」

「アルス、そこは嘘でも頷いとくとこだろ?」

「すみません」

「ったく、正直な奴だな」

 クリスは笑ってみせる。

「この武器、他にも仕掛けがあるんだろ?」

「よく分かりましたね?」

 アルスは鞘に再びロックをして大剣を封印するとメイスに戻す。

「この大剣、魔法が撃てるんです」

「へぇ、どれどれ」

 クリスは立ち上がって、メイスに戻った大剣を握る。

「くそ重いな」

「大剣に白剛石の鞘が付いていますからね」

 クリスは何とか両手で持ち上げる。

「で、どう使うんだ?」

「柄から撃ちたい系統のイメージと魔力を送り込むだけです。あと、撃つ時に発射するイメージ」

「簡単じゃねぇか」

 クリスは火属性のイメージで魔力を送り込む。

「で、あとは……、行け!」

 メイスの先端の穴から、圧縮された火球が飛び出した。

「凄ぇな……。本当に出やがった……」

「簡単でしょう?」

「ああ」

「それなら大剣に魔力を貯めれるから、僕でも使えるんですよ」

「そういうことか」

 クリスはニヤリと笑うと、メイスを下ろした。

「さすが、イオルク。仕事に手抜きがない」

「信用しているんですね」

「そういう関係だからな。お前も、そういうダチを作れるようになりな」

「……それ以上のものが出来ちゃったんですけどね」

「は? 何だよ、それ?」

 アルスは視線を斜め下に向ける。

「娘……」

 クリスは頬をチョコチョコと掻いて、一呼吸置く。

「……お前、彼女作って妊娠させたのか?」

「違います。十歳の女の子を十五歳になって直ぐに、養子にすることになったんです」

「何で、そんなことになるんだよ?」

「僕と同じ境遇の子で孤児院に連れて行ったら、そこのシスターが、その子の受け入れを拒否して仕方なく……」

 クリスは呆れながら腕を組む。

「イオルクもトラブルを引き込むタイプだったけど、お前もそうだったのか?」

「そうみたいです」

「その話を聞くと、悲しい話が悲しくなくなるな」

「皆さん、同じ反応ですよ……」

「だろうな。――で、その子は?」

「連れて来るにしても、里の皆さんに許可を貰わないと」

「イオルクだったら、許可取らずに連れて来たと思うけど?」

「僕には出来ませんよ」

「お前、本当にイオルクに似てないな」

「さっき、同じタイプだって言ったじゃないですか……」

「タイプと性格は別もんだろ」

「クリスさんのルールなんて知りませんよ……」

 クリスは、再び笑ってみせる。

「しかし、少し切り返しのキレが良くなったな」

「ああ……。もう二人、旅の仲間が出来たから……」

「他にも居るのか?」

「何か強引に着いて来ちゃって」

「お前、イオルクが居なくなってから、トラブル発生能力全開だな」

「どんな能力なんですか……」

「案外、イオルクの影に隠れて分からないだけで、ちょくちょく発生してたんじゃないか?」

「お爺ちゃんの影で、僕が目立たなかったのは認めますけど……」

 アルスは、そんな厄介な能力は要らないと思った。

「それで、あとの二人は?」

「双子の姉妹です」

「女ばっかりだな」

「出来れば相談できる男の人が欲しいんですけどね」

「でも、ハーレムじゃないか?」

「皆、子供ですよ」

「お前、そういうのダメだっけ?」

「ダメっていうか、まだ女の人を特別視してないです」

「そうか。第二次成長は、まだ先か」

 アルスは溜息混じりに付け加える。

「お爺ちゃんのせいで、女の人を見慣れちゃったせいもありますけどね」

「ああ……。あの馬鹿、旅先でアルスを娼館まで引っ張って行ってたんだっけ?」

「はい……。お陰で、女の人が裸で歩いてても平気になっちゃいましたよ」

 クリスは大笑いをしている。

「本当、悲しい話が笑い話になっちまうな。でも、イオルクが死んだってことは、次はオレかもしれない。今日は、ゆっくり話を聞きたいよ」

「いいのかな? 許可が下りなかったら、このまま帰るつもりだったんだけど……」

「話はつけとくよ」

「そんな簡単にいいんですか?」

「アルスが許可を取りに来たってことは、そいつらを信じてるからだろ? オレに紹介できない奴らなら、オレに話さないで、そのまま帰るはずだからな」

「クリスさん……」

「待ってるぜ」

 クリスは手を振ると、里のエルフ達に伝えに行った。

 アルスは信頼してくれたクリスに頭を下げる。

「ありがとうございます」

 アルスはエルフの隠れ里を後にした。

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