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作製編  47 【強制終了版】

 エルフの隠れ里に一番近い町の宿屋――。

 エルフの隠れ里は西回りと東回りで人間の住んでいる町の近さが変わる。イオルクがクリスと西から回った時は、立ち寄れる町が少なかったが、コリーナを助けた時は、比較的近いところに町があった。

 そして、今回は東回りのため、近くの町を利用できる。ここでは、リースとエリシスとユリシスがアルスの帰りを待っていた。アルスはエルフの隠れ里にリース達を案内してもいいかの確認を取りに行っている。

「暇ですね」

「本当……」

「どれぐらい待つんだろう?」

 三人は時間を持て余していた。

「ハンターの営業所には、ここらで捕まえられそうな賞金首は居なかったし」

「やることありませんね」

 リースがエリシスに質問する。

「アルバイトとかしないの?」

「あたし達?」

「うん」

「したことないわね。雑魚でも命を懸ける以上、賞金首の額って高いから。定期的に捕まえられれば困らないわ」

「そうなんだ」

「リースは、アルバイトしたことあるの?」

「うん、鍛冶屋さんで家事洗濯」

「ふ~ん……」

 会話が止まり、話が続かない。

 エリシスは、何となくでユリシスに話し掛ける。

「ところでさ……。アルスって、少し変わってるわよね?」

「変わってますか?」

「変わってるわよ。リースと知り合って、数ヶ月なんでしょ? 何で、あんなに親馬鹿なの?」

「親馬鹿……ですか?」

「だって、アルスからすれば、リースは知らない人の子でしょ?」

「……そうですね」

 エリシスとユリシスの視線がリースに向く。

「アルスって、どういう奴なの?」

「どういうって?」

「アイツの生い立ちとかよ。あたしは、少し凡々の臭いがするのよね」

「私達と変わらないよ。不幸なところとかも」

「不幸? アイツも両親居ないの?」

「うん、殺されてる」

「そうなんだ……。だから、リースを大事にしてんのかな?」

「そう見える?」

「見えるわね」

 リースが少し嬉しそうに微笑み、今度は、ユリシスが話し出す。

「アルスさん、本職が鍛冶屋というのも驚きましたね」

「そう! 驚いた!」

 エリシスの同意する言葉に、リースが自分の印象も付け加える。

「私も初めて見た時、分からなかったよ。大きいメイスを持ってるから、騎士の人とかって思った」

「だけど、そのくせ鍛冶仕事をしてるのを、まだ見たことないのは、どういうことなのかしらね?」

「それなんだけど、アルバイトした時に鍛冶仕事したのを見ただけで、ほとんど店先で売ってる武器を見たり、武器造ってるのを見るだけで終わりなんだ」

「変わってるわね?」

「独り言を聞いたら、『知ってる』とか『雑な仕事だ』とか言ってた」

「選り好みしてるわけ? 生意気ね」

 リースは腰の後ろからダガーを取り出し、テーブルの上に置いた。

「でも、腕はいいんじゃないかな? これ、アルスが造ってくれたダガー」

 エリシスとユリシスは、ダガーを見詰める。

「凄いわね……。本当に店に売ってるのと変わらないじゃない」

「これを造ったのなら、やっぱり鍛冶屋なんですよ」

「少し持っていい?」

 リースがエリシスに頷いて答えると、エリシスはダガーを持ち、水平にして目で見る。

「歪みが全然ない。特別性なの?」

「普通のダガーだって。でも、鉄鉱石だけはいいのを使ったって」

「そうなんだ……。と、言っても、あたしは見た目の綺麗さとかしか分からないんだけどね」

 エリシスが笑いながらダガーをリースに返すと、リースはダガーを腰の後ろの鞘に納めた。

「私は武器の違いが少しだけ分かってきたかも。武器を見てるアルスの視線を見て、表情を見て」

「アルスさんのこと、よく見てるんですね」

「うん」

 リースは、ここ最近のことを思い出す。随分とアルスと旅をしてきた気がする。隣には常にアルスが居るのが当たり前のように感じる。

「これからも、私は見続けるんだろうな」

「見飽きるんじゃない?」

 リースは微笑む。

「アルスは、あれで面白いんだよ」

「そんな片鱗は確認できないんだけど?」

「じゃあ、アルスがハンターになった話をしてあげる」

「期待するわ」

 リースはエリシス達にアルスのハンター試験の話を始める。

 アルスは口止めをしていなかったが、確実に知られたくない話だった。

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