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■■■■――。

 深夜の王都の街は、噂話をする民が姿を消して静寂が支配していた。しかし、ある屋敷では静寂とは無縁の叫び声が響く。

 首謀者の男が、自らの屋敷で命乞いをしていた。

「御許し下さい! あのような邪魔が入るのは予想外だったのです!」

「言い訳はいらない。もう、機会が無くなったのだ」

「そんなことはありません! また私が機会を作ります!」

「無駄だ。私は自分の存在を知られる訳にはいかない」

「どうか、御見逃しを! 誰にも話しません!」

「もう、黙れ」

 獣が狩りを開始する。首謀者の男を喰い千切り、屋敷に住む家族も使用人も喰い千切る。屋敷の中で悲鳴があがったのは僅かな時間だった。

 赤い水溜りが散在する静かな屋敷で獣が呟く。

「不味い……」

 夜の街の中から、獣は何処かへと消えて行った。

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