深夜の王都の街は、噂話をする民が姿を消して静寂が支配していた。しかし、ある屋敷では静寂とは無縁の叫び声が響く。
首謀者の男が、自らの屋敷で命乞いをしていた。
「御許し下さい! あのような邪魔が入るのは予想外だったのです!」
「言い訳はいらない。もう、機会が無くなったのだ」
「そんなことはありません! また私が機会を作ります!」
「無駄だ。私は自分の存在を知られる訳にはいかない」
「どうか、御見逃しを! 誰にも話しません!」
「もう、黙れ」
獣が狩りを開始する。首謀者の男を喰い千切り、屋敷に住む家族も使用人も喰い千切る。屋敷の中で悲鳴があがったのは僅かな時間だった。
赤い水溜りが散在する静かな屋敷で獣が呟く。
「不味い……」
夜の街の中から、獣は何処かへと消えて行った。