千九百四十五年、八月六日、八時十五分。
微かな希望の灯火を胸に私達が街中を歩いていると、広島市の上空に大きな鳥が何羽も飛んで来た。
鉄の翼を広げる鳥は私達に目掛けて、落し物を雨の様に降り注いだ。
カン!カン!カン!カン!…………。
鳴り響く敵襲の警報音と共に、約十四万が生命の灯火を鎮火させられることとなる。
──そうだ、広島市に原爆が落とされたのだ。
原爆の爆風が辺りを吹き飛ばした。
人が脳髄を撒き散らして死んだ。
人が飛んで来た建物の破片が體を吹き飛ばして死んだ。
さっき横切った人は叫び声すら出せずに燃え死んだ。
煌びやかだった数々の建物は見るも無惨に崩壊した。
崩壊した建物に数々の人が押し潰されて死んだ。
聞こえてくるは悲鳴と怒号の断末魔。
皆が己の生命の灯火を消させまいと、他人を蹴落として生き延びようとした。
逆に、他人を優先させた善良で馬鹿な人間は死んだ。
子どもを蹴飛ばし、女を突き飛ばし、他人を踏みつけた者が生き残る。
地獄そのものであった。