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第4話 明るい未来を夢見て


 朝七時半頃、私達は木製の農具を調達する為に畑で採れた野菜を籠に入れて広島市へと出掛けた。

 戦争中、農具は幾ら合っても足りない。

 長期間使える鉄製の農具は戦争の道具にするため、全てを帝国に徴収されたからだ。

 手に残ったのは木製の農具だけ。

 木製の農具は使いづらく體に負担が掛かるし、直ぐに壊れてしまうから不便であった。

 それも、生きてればこその物種だ。



 朝八時頃、広島市に着いたうち達は農作物と農具を店で等価交換した。

 籠一杯に入っていた農作物で、木製の農具がたったの二つのみ。

 しかし、これも仕方の無いことだ。

 相手だって生きるのに必死なのだから。



―――

 大勢の人間が交差する人混みの中、私達は離れない様にと手を繋いでいた。

 その手は温かくて、互いに生きていることを身に染みて実感した。

 活気溢れる広島市のアレコレを見て、私達が抱くのは正反対な希望と絶望の二つ。

 煌びやかな街並みを見て将来に希望を持ち、やつれた物乞いを見ては現状に絶望したのだ。

 しかし、これも仕方の無いことだ。

 我が国が戦争に勝てばきっと、明るくて温かな未来が待っているのだから。


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