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第2話 空虚な悲しき日々


 千九百四十一年、十二月八日。

 太平洋戦争が始まった。

 キッカケは我が帝国による真珠湾攻撃。

 この日を境に、私達の日々は地獄と化したのだ。


 理不尽に徴兵される大人達。

 元々人口の少なかった村には両手で数えられる程の大人しか残らず、私達の父親も徴兵されて逝った。

 父親との今生の別れは、どうも思い出せない。

 心に深い傷を遺した思い出だから忘れたのか……。

 誰かが忘れさせてくれたのか……。

 そんなことすらも、今の私には思い出せない。


 理不尽に徴収される農作物。

 私達子どもは、少ない大人の言うことを聞きながら日々農作業をした。

 基本的に食べていた物は小麦粉で作ったすいとんで、小麦粉すら使えない時はドングリの蒸しパンを食べた。

 遊ぶ暇も無ければ、食う飯も無い。

 言葉通り泥水を啜って生き延びたのだ。


 特に酷いのは冬であった。

 食料も尽きていれば、採れる食料もない。

 寒いよ……寒いよ……。

 皆で丸まっては體を縮こませて寒さを凌ぐ。

 ひもじいよ……ひもじいよ……。

 皆で残った数少ないイモを食べ飢えを凌ぐ。

 言葉通り命懸けで生き延びたのだ。


 皆、虚ろな目をしながら生きてきた。

 でも、この時はまだ、幸せだったのかもしれない。

 だって皆、生きていたのだから。


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