お茶は
そんなわけで、表でひと仕事を終えた私たちは小休憩。セバスの用意してくれていた焼き菓子に舌鼓を打っていた。
「あ、美鳥さんが帰ってきましたの」
部長会議から戻って来た美鳥は、私たちの顔を見ると頬を緩めた。そんな美鳥に、花林と茉鈴は大きく手を振りながら声を掛ける。
「お疲れーい。今日も美味しいお菓子あるよー」
「外走ってくる前にちょっと食べちゃいなよー」
「頂きます。……ん、何ですか? こちらのクッキーにプリントされたイラストは」
「それはワタクシがデザインしたものですわ。お願いして付けて頂いたの。あやみんちゃんをイメージしていますの」
「へーそーなんですねー」
バキ。
「⁉ あやみんちゃんが真っ二つですの!」
「何を騒いでいるのです? 食べやすいように割っただけじゃないですか。と言うか凜々果さんも、そうやってみなさんと食べていたのでしょう?」
「そうですが、違いますの! あやみんちゃんの絵が付いているのは、あやみんちゃんに見てもらいながらワタクシが頂く用なのですわ! だから赤の他人のあなたなんかにワタクシのあやみんちゃんを悪戯されたくなかったのですの!」
凜々果は早口で言い切ると、美鳥から私に身体を向き直して、うわ~んと悔し涙を流しながらクッキーを爆食いし始めた。
美鳥は同情するような眼差しで私を見ると言った。
「あやみんさんが妙に意気消沈されている理由がわかりました。それはそうとこのクッキー、見栄えは変てこりんですが、味はとても美味しいですね。こちらのはセバスさんが?」
「ご名答。さすが二葉さまです。うちのお嬢さまにもその推察力を分けて頂きたいものですね」
「推察力……? まさか。こんっな
「二葉さまヒドイ! いいですか、ほらこうやってここの部分を
「言うなぁぁ!」
「あの!」と、美鳥が手を挙げた。
何だろうと思って振り向くと、みんなの視線も美鳥に集まる。
「実は先ほどの部長会議の場で、いいものをもらって来たんですよ」
美鳥は画面をスワイプさせたりタップしたりしてから「どうぞ」と、手に持っていたスマホを私たちに差し出した。
「なんこれ?」
「女子っぽいけんど、男子かこいつ?」
「ええそうです。これがどなたか、あやみんさんならお分かりになりますよね?」
「……取り調べかな?」
そう言って私が、花林と茉鈴が覗き込んでいて見えなかったスマホの画面を確認しようとした時。
「ちょっとかして!」と、花林が美鳥のスマホをかっさらった。
「えーごほん。そこのポニテが可愛いあなた! ちょ~っと、お話よろしいでしょうかー?」
また茶番が始まるんだと思ったけれど、まぁいいか。付き合うことにした。
「はいはーい、カームズ何でしょうかー?」
「お、ノリが良くていいねぇ。えーではこいつ……じゃなかった、この方をあなたはご存じですよね?」
カームズに差し出されたスマホ画面を見ると、一瞬で頬が耳が喉が熱くなった。
「ううう、ううん知らないっ。知らないよこんなキラキラした人!」
「はい黒! 今の挙動で、私の推理が正しかったことが証明されました。ではマリトンくん準備を!」
「はいカームズ!」
マリトンはカームズに敬礼をすると、私の背後から胸に手を回す。
「わ! またこれ⁉ もう何なの~?」
「こらこらお嬢ちゃん、大人しくしないと正しい検査が出来ないですよ?」
「け、検査ぁ……?」
「そん。嘘を見抜く検査ですよ。要するにこれは、噓発見器ってわけです!」
変態染みたマリトンの言葉に小首を傾げていると、カームズにそう言い放たれた。その背後で凜々果が、指を
「えぇ……? と言うか、噓発見器なら左胸だけでもいい気が……」
「気にしない気にしない。はい、じゃあセバス?」
「はい! お待ちしていましたよ!」
ひえ。マリトンに呼ばれて、セバスは声を弾ませてやってきた。
「私めにお手伝い出来ることなら、なんなりと!」と言うセバスの10本の指が、嫌な動きを見せている。
「どうです、変化ありましたかマリトンくん?」
「ええカームズ。心音がすんごい勢いで落ち着いてきました」
「そうですか……それじゃあ、これならどーだっ!」
「う!」
ばばーんと、カームズにスマホ画面を向けられて私は動揺した。
「つまりこいつが“サラサラくん”か?」