「だから泣いてたんだ、スタンプの猫!」
人の気も知らないで、ケラケラと笑う花林。
放課後の部室。みんなが、ちゃちゃっと着替えを済ませていく中、
「もぉぉ誰の所為で、へこんでいると思ってんのよぉぉ……」
「でも逆に良かったんじゃないの? この子ええ趣味してるわぁ~、って思ったよサラサラくん」
「茉鈴……それマジで言ってる?」
って言うか何で関西弁?
「はいはい、さっさと着替えますよ」と美鳥に
そうして私がモゾモゾと着替え始めると、美鳥は安心したのか話を戻すのだった。
「
「でも4巻と5巻だよっ? 読み進めてる人みたいじゃんか。あ、この子、そんなにこの漫画が好きなんだなぁ~……って思ったよ絶対ぃぃ」
「ならバラバラの巻を、意図的に
「へ、気になる……? ふぁ⁉」
「べ、べべべ別にそんなことないし! 男子なんかに
私の慌てぶりに、ジト目になる全バド部員。うう。
たださ。みんなが私のことをさ、おもちゃみたいに扱うからさ。「何カップあるんすかー」とか、「いつから大きくなったんすかー」とか、にやにやしながら話し掛けてくるような男子ばかりがさ、周りに集まるようになっちゃったからさ。だからなんかちょっとだけ、サラサラくんの
「まぁ私は、その方が都合が良いですけれど」
「え……」
そっか。やっぱり美鳥も、そういうのに浮つくようなやつとは、ペアを組みたくないんだ……。
「あやみんさん? もしかして何か勘違いをしていらっしゃ――」
「美鳥、いるのか?」
「ああいますよー!」と、茉鈴が部室のドアを
ちょおい、私まだ着替え途中なんですけど⁉
慌ててTシャツから肌が見えてないか確認していると、背後から「うわ!」と驚いた声が聞こえた。
別に露出はしていなかったし、凜々果が腕を広げて私をフォローしてくれているから見えてはないのだろうけれど、まさか女子更衣室と同等の、この部室のドアが開かれるとは思わなかったのだろう。
「すすすまない。そういうつもりじゃなかったんだが」
あ。やっぱり美鳥のお兄さんだ。会長、私たちデリカシーがなくてすみませんっ。
会長は花林と茉鈴に冷やかされて、めちゃめちゃ動揺していた。
何度も顔を正すように眼鏡をくい上げしていて、なんだか可愛いと思った。