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第3話 ただ好きだから=ep4続あやみ・みどりペアと最初の勝ち星=

 ネット際に落としたシャトルを、相手選手が体勢を崩しながらバックハンドで振り上げる。ストレートに飛んでいった。


「お願いしますっ」


 右サイドに構えていた美鳥が、コート奥深くに伸びたそのロブを見送って前に出る。

 同じように左サイドにいた私は、反応し切れなかった美鳥のフォローに回った。

 弾道が高かったので助かった。余裕はないけれど、素早く右奥へ移動して、下降してきていたシャトルを叩いた。


 パァン!


 あまり速さが出なかった。しかもネット際でロブを上げた相手選手は、既に体勢を立て直している。立ち位置もネットから離れていて、しっかりと返球に備えていた。バックハンドでレシーブされてしまう。


――でも。


 パァァン!


 私はさらにシャトルを叩く。今度は速い。だから拾われてしまう。当たれば返ってしまうのも、速さがあるゆえだ。

 けれど意図しなければ飛距離は伸びないし、甘く浮くもの。


 もらった!


 勢いを殺さないまま前進していくと、美鳥が左にけて私に道を作る。前方に飛び込んでいく私と交差し、美鳥は後方へと流れていった。

 私はもう一度、シャトルを叩く。


「イン。ポイント11‐4イレブン・フォー


 スマッシュが決まった。

 21‐13でファーストゲームを取って、セカンドゲームもいい感じだ。少しプレッシャーに弱い美鳥も、特に気負うことなくゲームが進められていると思う。


「綾、ナイスショー!」

「うん!」


 そうして二人で頷き合いながら、喜びを噛みしめていた時だった。


「2対0で三波さんの勝ちです」


 ふぁっ、勝ち⁉ しかも、もう勝ったの⁉

 と言うか、ストレート勝ちって凄っ。


 思わず私は、二度見した。隣のコートでシングルスをしていた凜々果が、涼しげな表情でスコアボードにサインをしている。


 あっ、こっち見た。凜々果嬉しそう……!


 凜々果は瞳を揺らして喜びのオーラを放つと、私たちに向かってピースをする。

 私たちは水分補給をする対戦相手たちの目を盗んで、よくやったと言わんばかりに親指を立てたり、凄い凄いと拍手するフリをして凜々果を褒めたたえた。


 わぁぁ、凜々果やったね! 睦高で最初の勝ち星じゃん!


 凜々果の勝利にこっちまで気持ちがたかぶってくる。

 隣にいる美鳥も一緒のようで、二人で見つめ合って士気を高めた。

 そして凜々果の試合の後は、いよいよこの二人の出番だ。


「んじゃ、よろしくね茉鈴」

「おっけー花林」

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