「うっわ、くそ綺麗なんだけど」
今日も双子のように花林と茉鈴は声をハモらせた。
創設されたばかりの、この
二人が言うように睦高と比べると真新しさを感じるし、敷地がとにかく広い。
そんな会場にもなっている場所で練習試合が出来るなんて、オファーを受けた片寄先生に感謝である。
「今日はよろしくお願いします。部長の
体育館に入ってすぐ、神無月高の部長さんが出迎えてくれた。黒を基調にしたユニフォーム。襟ぐりや脇などに黄色のラインが入っていて、パンツタイプだし、髪もショートカットだし、かなりスポーティーに感じた。
他の部員たちは既にコートで打ち合いを始めていて、私たちに向けて大きな声で挨拶をしてくれた。男子もいた。
「部長の二葉です。お誘いして頂き、どうもありがとうございます」
背後でにやにやする私たちの視線に気付いたのか、部長の美鳥は咳払いをしてから眼鏡をくい上げした。
もちろん部長決めは、満場一致で美鳥になったのは言うまでもない。
私たちは体育館に隣接して建てられた神無月高の部室で、初めてユニフォームに袖を通す。
白のフレンチスリーブが付いた身頃は、淡いピンク色。丈が長めになっているから、スコートの白が少し覗く感じで着られる。可愛い。
「茉鈴、本当にありがとう!」
「もういいって。何回言ってんのっ」
「でもみんな似合っていますわ。このひらひらしたスカートも可愛いですの」
「ほら、オジョーも気に入ってるしさ。気にすんなって」
「そういう花林さんも気に入ってるのでしょう?」
「まぁにぃ~♪」
花林はくるりんとターンをして言った。可愛い。
「そうだ、あれやろうよ! 美鳥お願い!」
「あれって……あれですね!」
美鳥が片手を前に伸ばすと、皆もそれに手を重ねた。
「今日は練習ですけれど、私たちにとって初の試合になります。より意味のあるものにしましょうね。では、睦高――ファイ!」
「「「オー!!」」」
「オー、ですの!」
そうして円陣を組んだ後、再び体育館に戻る。
片寄先生が来ていた。散々ユニフォーム姿を褒められた後、いよいよ試合形式で練習が始まる。
総体を想定して、私は美鳥とダブルスで試合に臨むこととなった。
凜々花はシングルスだ。いきなり他校と試合なんて普通は緊張しそうだけれど、凜々果に限っては心配いらなそうである。
ほら、闘志で瞳に炎が宿っているようだし、身体もうずうずしているのがわかる。
というか、それは私もだ。緊張もするけれど、楽しみで仕方がない。
負けるのはいやだけれど、それもプラスに出来るのが練習試合なのだから。妙なプレッシャーに押し潰されないで、きっと最大限に近い力を出せるんじゃないかって自分に期待して、私は気分が高揚しているのだろう。
「美鳥、頑張ろうね!」
「ええもちろんです!」
ファイティングポーズを取る私に、いつもよりも声を弾ませて、美鳥は眼鏡をくい上げしたのだった。