「では片寄先生、外を走って来ますね?」
「ああ。でも廊下は走るなよ~」
「「「「「はーいっ」」」」」
「ちょっとみなさま~! 私めのことも忘れないでくださ~い! ……って、みなさま揃って無視をされるなんて、あんまりですよぉぉ~!」
私はみんなの輪の中、おいおいと泣くセバスに笑顔で手を振る。
「あやみんさん、だめですよ?」
「セバスなんか無視で結構なんですわ」
「そうだよ~。ああいうタイプって、甘やかしたら絶対しつこいよ~。ね、茉鈴?」
「だね、花林。あやみん好かれてるから、気を付けた方がいいって絶対~」
酷い言われようだ。
でも、ちょっと背伸びしたい年頃の女子は、どんなに年上だろうが目上だろうが、異性を小馬鹿にするのがテンプレートだったりする。苦い経験もしてきて、ここまで大きくなったのだからと、胸を張って知ったような口を利くのだ。
とは言え、人を傷付けるのはだめだし、セバスもごめんね!
けれどこうしてみんなとふざけ合っていると、あの子のことを忘れられる気がした。
でもそれって、いいのかな? そんなこと、本当は許されないんじゃ……。そう思った。
「はぁ」
「またその目です」
「へ?」
「昨日も度々、その目をしていました。……最後にされたのは、居眠りをされる前にです」
「え……」
顔に出ていたんだ。うわぁ、そういうところが足りないんだろうな私。
「話し掛けて良かったです。思い付きついでにしては、部の設立まで出来ちゃいましたし」
「え。ついで、思い付き……って、うええっ⁉」
これには、みんなも驚いている。相変わらず超絶美少女だけは、小首を傾げているけれど。
「上手く引っ張り出せたつもりでしたけれど、まぁそんなに何でも都合よく、事は運びませんよね」
そう言って、美鳥は眼鏡をくい上げする。
私は
「な~んか深刻そうだね?」
「んね。悩みは誰にでもあるけどさ、わけありかな? 話ならいつでも聞くよ?」
「あのっ、ワタクシにも、ワタクシにも話してほしいですのっ。ワタクシだって、あやみんちゃんの味方ですものっ。頭の
「み、みんな……」
嬉しい。みんなの気持ちが嬉しかった。でもみんなとは、まだ会ったばかりなのに、どうしてそんなに信頼をしてくれるのだろう?
それに――。
「り、凜々果のは、なんかちょっと違うような……?」
「え? え~っ、ですの!」
凜々果の反応に、思わず笑ってしまった。
「ううん、ごめんね嘘。すごくうれしいよ。ありがとう凜々果。みんなもありがとう」
私の気持ちが伝わったのか、みんなは、ほっとしたように笑顔になる。みんなの瞳に映っていた自分も、同じような顔をして笑っていた。
「でもさ、
「あ、花林。それを蒸し返しちゃう?」
「いいじゃないですか。目標は高い方が楽しいですよ? 想像を超える結果が生まれますから。それに目標を高く設定したお陰で、花林さんと茉鈴さんはともかく、意外とあやみんさんがプレッシャーに強いこともわかりましたし、凜々果さんの実力も
「そっか確かに。んっじゃーさ、その高みってやつ。部の目標にしようよ? よくない⁉」
花林の思い付きに、みんなで頷いた。
数日後、注文をしたユニフォームが片寄先生から配られた。
けれど、なぜか私が希望をしたピンクのユニフォームで、意味がわからなすぎて一瞬時が止まったようになった。
どうやら茉鈴が変えてくれたらしい。
気が変わって、2番目の候補にしたんだってさ。