「おおっ、君は確か首席入学をした二葉美鳥さんじゃないか! よく来てくれたね! ぜひこの生徒会執行部に……って、バドミントン部……?」
「はい。出来ましたら来月に予選が始まる総体に参加をしたいので、合わせて部活動への昇格の許可も頂きたいのですが」
「えっ⁉ い、いや、それはいくらなんでも……全校生徒に承認も得ないといけない決まりだしなぁ」
「予算のこともあるし、まず持続可能だという実績を示してもらわないと……」
まぁ、そうなりますよねぇ~。私たちも驚きましたもん。超絶美少女だけは小首を傾げていたけれど。
「お前たち、何を騒いで……」
「会長!」と、たぶん書記先輩とたぶん会計先輩の二人が、はっと顔を上げた。
扉の前に立つ、眼鏡の長身の男子が会長だ。入学式の時も思ったけれど、なかなかのハンサムさんである。
それにどことなく誰かに似ているような……?
「兄さま!」
「あ、ああ美鳥か。部の設立をしたいんだったよな?」
「ええそうですっ」
二人は同じタイミングで眼鏡をくい上げする。
「えっ、もしかして会長の妹⁉」
「気付いていなかったとか冗談だろ? お前さっき自分で、
いやいや私も今知ったんですけれど。名前なんて祝辞の時に聞いたくらいだし、そもそも聞き流していたからなぁ。
「それよりも会長、まさかこの話を聞き入れるおつもりですか? 生徒会規約に反しますよ?」
「それに部への昇格は、実績がなければ職員会議で審議すらしてもらえないかと思いますが?」
困惑する先輩たちに、会長は眼鏡をくい上げする。
「その心配は無用だ。まず生徒総会については今から緊急に開くこととする!」
「え⁉」と驚く私たちに構うことなく、会長はヘッドマイクを付けると机の上に置いてあったスイッチを押した。
キュイ~ン……
「生徒会長の二葉から全校生徒、並びに先生方へ連絡をいたします。本日付けで新しくバドミントン部を立ち上げたいという五人の強い希望により、誠に勝手ながらこれより校内放送にて、第1回生徒総会を始めたいと思います。つきましては、え~うんたらかんたら……」
おお。本当に私たちがスンとしているだけで、事が運びそうじゃない!
「――というわけで、賛成でない者は16時までに生徒会室へ来て頂きたいと思います。以上!」
プツ……。
「こんな感じでいいか?」
「もちろんですっ、兄さま!」
わぁぁこれはもう、ほぼ決まりって言っていいよね⁉ だって反対する方が絶対に面倒だもん!
「実績の方は放送でも述べた通りだ。全国レベルのペアと三年間継続して励んだ美鳥と、い、一ノ瀬さん……。ええっと、さらに期待に胸を高鳴らせる新人もいる。この五人なら、先生たちもきっと納得してくれるだろう。っと、すまない。お前たちの考えがあるなら聞こう」
「いえ……!」と、心配そうだった先輩たちの表情が晴れる。
「そうでした。生徒の希望を叶えるのが」
「我々、生徒会執行部の本分ですもんね?」
先輩たちの言葉に、会長は嬉しそうだ。
ちょっと何これ、眩しいっ!
そんなこんなで、ここに来るまでに色々とあった私は、少し心が洗われた思いになったのでした。
そして翌日――。
「では私は、職員室に日誌を届けてから向かいますね」
「うん、わかった」
二葉さんと一度別れ、私は足取り軽く体育館へ向かう。
まだ不安は拭えないけれど、今日からまた、部活漬けの日々が始まるんだ!