バンド演奏としては初めての大舞台で緊張しているが、同時に
「これが私たちが目指していた舞台」
目をキラキラと輝かせながら、
レミーの演奏開始の合図は出ているが、この感覚が胸の中でまだ高まっており、次になかなか進めない。
「あのー、演奏を……」
「あっ、すみません。なんか感動しちゃって……」
「そうですか……じゃあ、そろそろいいですか? みなさんもお待ちかねみたいですし」
「わかりました」
一音目は激しいギターとドラムから始まった。
魂を刺激するかのような演奏を見せつけ、観客の心へと訴えかけていく。
その音がに観客たちは心踊らされ、熱狂する。
ロック。それが今回美月たちの選曲だ。
二次予選はインパクト重視でいきたかったから。
今まで挑戦したことのないジャンルで心配だったが、それは杞憂だったようだ。
洗礼された彼らの演奏は一瞬で人の心の隙間に入っていった。
アクセントをつけるためにキーボードが繊細な音を奏でていく。しかし、そこには力強さも混ざっており、ただ肌を撫でるような優しさだけではない。
しばらくして、中性的な声色が会場を包む。
今までの
掴みはバッチリ。あとは、どれだけ自分たちの世界に引き込むか。それが勝負の分かれ目になる。
Aメロに入り、
入りの部分と百八十度違う歌声を見せられ、一旦落ち着きを見せる観客。
他の楽器の演奏にも耳を傾ける余裕が出てきて、聞き惚れるものもいた。
それぞれが違う役割を担い、この場の演奏を作り上げている。
それを形にしている
完全に調和が取れていると言ってもいい完璧な演奏だった。
最高のバンドの演奏を見て、控え室にいた
「これが見たかったんだろ? よかったな」
彼女の横に並び、優しい声をかける男性。
音楽に情熱をかけており、誰よりも音楽に対して愛を持っている。
そんな彼の言葉を聞いて、
「だって、私は
ピアノコンクール以来の大舞台での演奏。一緒にあの舞台に立っていた香織としては美月の演奏を聞けたことが何よりの喜びだった。
「ねぇ、どこ見てるの
「そうか? これでよくここまで来れたなって感じだ」
「まぁ、少しは楽しめそうじゃねぇか」
凶悪な笑みを浮かべる
「
大勢の場のため抑えたが、今にも感情を表に出して否定したくなる感覚に襲われていた。
色々な感情を与えている
程よい高音で聴くものの耳を心地よくさせてくれる
間奏に入り、
スティックでシンバルを叩くと、それが合図だったかのように、
体が熱くなっていき、今が冬であることを忘れさせてくれるビートだった。
力強い声色で
待ってましたと言わんばかりに、コーレスをしていく観客。
アドレナリンが爆発し、問題行動でも犯してしまうのではないかと思うくらい、目の前が見えなくなっていく。
そんな彼らの演奏は順調にいくと思われたが……
「
「
だがそれは、音楽経験者がよく耳を凝らしてやっと理解できるくらいの些細なズレだ。
この熱さの中で指摘できる人間はいないだろう。でも……審査員は見逃してくれないかもしれない。
それが
そのまま、
最後の見せ場で、
あまりに長いシャウトに、会場は時が止まったかのように感じた。
しばらく沈黙が続き……その後に拍手喝采が起きる。
「やり切った……」
息を切らし、
「ありがとうございました! では、早速得点といきましょうか!」
レミーの合図に、審査員は得点を出していく。
全てが決まる数字に美月たちは手を合わせ、願いを込める。
高得点でありますように! それが全メンバー共通の考えだった。
そして、結果は表示される。示された結果に
合計結果は……九八六点。その数字を見て、
平均点を取れなかったから。暫定でも十位。十一名演奏を終了し、その中でワースト二位だ。
想像以上に低い結果に、驚きを隠せないでいた。しかも、驚きはそれだけではない。
一番低い評価をつけたのはなんと
八十八点。九十点もくれず、とても辛口評価をしている。
審査員として公平に。そのために仕方のないことだったのかもしれないが、そんな彼女がこの点数をつけるほど、自分たちの実力は心に響かなかったということだ。
「いやー、
「簡単です。
彼女の言葉に、
いつも通りの無愛想な表情。だが、
立ち上がってコメントもしてくれない。それだけ今の演奏は彼女にとっては価値のなかったものだと言われたようなものだった。
控え室に戻る
落ち込みながら、ソファに座っていると……
「先ほどの演奏素晴らしかったです」
突然声をかけられて
なぜなら、声をかけてきたのは
驚きの顔に満ちている
「
「姉?」
その様子に
「申し遅れました。私の名前は
その言葉にこの場にいた全員が驚愕の表情を浮かべた。しかし、ただ一人、