「
「兄上! どういうつもりだ!」
二人の男性が言い合いをしている。それをたまたま通りかかった春樹は、隠れながら見ていた。
和室に堂々と鎮座位している
対して、食ってっかかっているのが
「どうもこうも、奴が世間で注目されているからだ。私はバンドという低俗なものは嫌いだが……どんな形であれ、音楽で注目されているものは
「ふざけるな!
「目を覚ませ。お前には
「それは……ないことはない」
今の父の覇気の落ちた言葉を聞いて
父は
それがクラシック音楽の指揮者──
そんな父がここまで熱くなっているのを見て、
この反論は家族を守るためのものだったから。父の価値観としては一族より家庭だった。
「何してるの?」
「
「へぇ、お父様と叔父様が喧嘩ねー。珍しいこともあるもんだね。ところで何を話してたの?」
「兄貴を養子にしたいって……」
その言葉で
部屋一帯が冷気に包まれたかのように寒気を感じた。そして……
「へぇー」
「あ、きね、え……」
「チッ!」
苛立ちを表し、その場を離れていく。
「秋姉、やっぱり」
昔から感じていたが、彼女は
しかし、
「兄上にはもう頼らない! 私は本家と縁を切る! 子供達は私が守る!」
「好きにしろ。だが、
背を向けた
こちらに近づく足跡を聞き、
「俺たちどうなるんだろう……」
今まで彼が一族から受けてきた仕打ちを考えたら、こういった感情にならないほうがおかしい。
あれは小学生三年生頃からだろうか……
*****
「歌の感想は?」
「よか、ったと思うよ……」
緊張しながら、本音で感想を述べていく。だが……
「その目をやめろ!」
「えっ!」
「その目を止めろって言ってるんだよ!」
急に怒りを表した秋に、顎に膝蹴りを思い切り入れられ、
「
ボコボコになるまで殴ったり蹴ったりする
全くの手加減を知らない秋。殺してしまうほどの勢いが数分続いた。
「
しばらくして、意識が遠のいていく中で優しい声を聞いた。
音が隣の部屋に漏れていたためか、母が助けに来てくれたらしい。あれがなければ死んでいたかもしれない。
母──
その後舌打ちをして、
「お母様、ありがとう」
「当たり前じゃない。アナタは私の宝物なんだから」
母の優しさに温もりを感じた。それに涙が出てきて……とても嬉しかった。
それからも
食事の格差。好きなものを食べさせてもらえる秋と、リクエストすらも通らない
掃除も
その扱いようは、人に対して行われるものではなかった。
この日常は、彼にとっては地獄でしかなかった。しかし、家族の温もりがあったからこそ、
*****
本当に悔しい思いをした
「私だ、入るぞ」
そよ風のような優しい声がし、男が部屋の中に入ってきた。
「親父……」
入ってきた人物──
父が自分の正面に座り畏まる。その姿に、
父の言葉を待つ。緊張したが、幼い頃から自分や兄に優しくしてくれた父に限って酷いことをするはずがないと安心感を得れた。
「
父の第一声に、一瞬、息を呑んだ。だが、
「そうか……」
本家との格差は明らかな
「私も
母も部屋へとやってきて、自分の意見を述べる。
「お袋……」
両親だけが自分の味方でいてくれる。それが嬉しくて……嬉しくて……
そんな両親が言葉をかける。
「
「
もう答えは決まっている。速攻で返答し、二人と一緒に本家を出た。
その旨を兄にメッセージで伝えると、「それがいいと思う」とメッセージが来た。
兄も本家に嫌悪感を抱いていたことをがわかる。
本家の人間とは、どうしても救いもないような醜悪な存在だったと証明された。
*****
あれから時は流れ……四年。
大勢の観客が
出来損ないと思っていた人物がこの最高の舞台に立っているのが
熱狂が沸き、会場が熱に包まれていく。こんな場所での演奏を彼らは一度もしたことがない。
会場の雰囲気にとても緊張しているが、やっと夢見た舞台に立てた。それがとても嬉しく、今にでも感情が爆発しそうだった。
兄が立てなかったステージ。そこに今自分が立っている。
兄は自分の姿をどう見えているのだろう。
喜んでくれているのだろうか。
そんな感情が渦巻きながら、彼らの演奏は始まる。だが……
「
「なんでもない、なんでもない」
まだ、『
気持ちはわからないでもないが、そこに意識を持っていかれるといい演奏はできない。
この大会は
「演奏に集中しろよ」
「あぁ……」
「では、
司会者──レミーの言葉で
彼らの運命を決める重要な一曲を。