「あけおめ!」
『あけおめ!』
一同は地元で有名な神社へと来ていた。
目的は初詣とスタープロジェクトへの祈願のため。
それにしても
「じゃーん、かわいいでしょ!」
彼女を色恋の目で見ていない
「恥ずかしいよー」
「浴衣の時も思ったけど、
「洋服もだよ」
「そうだねー。彼氏さんは美しい
「悪いかよ」
「
「そ、そうですか……ありがとうございます」
「みんなボクも褒めてよ!」
「はい、はい。
「
適当にあしらわれる
一連のやり取りを終え、一同は神社を歩いてまわる。
今は正月。儲けどきなのか、この時は神社に屋台が出ていることが多い。
「お参りが先だぞ」
「ぷー。わかってるよ」
頬を膨らませながら、
参拝場に行く一同だったが、一月一日は参拝客が多かった。行列ができており、参拝するまでに時間がかかりそうだ。
「でも、みんなここを選んでくれてありがとう」
「それにしてもショックだったんだよん。
「そうじゃん! ボクらにも言ってほしかったじゃん!
「ごめん……」
そんな双子の会話に割って入るように
「二人も
「本当にごめん。でも、ありがとう」
皆の優しさに温かな気持ちになる
「ここの効果は保証するよ。俺もここで願って肺炎治ったからなー。
「うん、信じてるよ」
長時間並び、自分たちの番に回ってきた。
最後の望みとしての神頼み。医療では治らないと言われたための悪あがきでもあった。
「スタープロジェクトで優勝できますように」
だが、
「
「後ろの人に迷惑かかるからさ行こうか」
「みんな願い書いた?」
「もちろん」
「じゃあ、見せあいっこしよ!」
「なんで……恥ずかしい」
「いいじゃん!」
しかし、皆が書いたのは
皆の自分を思う気持ちに涙が流れそうになる。
「私たちはこれでもいいけど、メンバーのみんなはスタープロジェクトで優勝を書けば良かったでしょ?」
「バカだね。優勝は神に頼まなくたって掴めるしょ? でも、ハニーの病気はもうこれしか治療方法がないんだよ」
「確かにな。皆の結晶が集まれば治るかもな。魔法みたいに」
「本当にみんな
彼らの純粋な気持ちに
「なんで笑うんですか!」
「ごめんじゃん! 面白いから笑ったじゃなくて、かわいいなーって思ってじゃん」
「確かに、ちょっとかわいいかも」
しばらくはそのやり取りがあり、一同は絵馬をくくりつけてくる。
その時に手を合わせて「自分たちの願いが届きますように」と願って。
「おみくじ!」
「初詣の醍醐味だね」
次に一同はおみくじのエリアへとやってきた。
「大吉!」
またも
「私も!」
「私もだよ!」
その横で乗り気ではなかった二人が舌打ちをする。
「だからおみくじ嫌いなんだよ」
「
良い結果を出したことのない二人。凶が連続で続くという事件があった日から、おみくじは引かなくなった。
そして、今回も二人とも凶。
「まぁ、こんなものエンタメの一種だし、気にしない、気にしない」
「アタシは気にしてないし……まぁ、吉だし普通かん」
「そう、こんなものエンタメ、エンタメ。僕も末吉だし……」
気にしていないと言った二人が一番気にしていそうな言葉使いだった。
おみくじの結果に意識を向けている一同。しかし、気づいたら
「あの二人、抜け駆けしてイチャイチャするつもりだね」
「そんなつもりはないと思うけど……」
吉を出し、唯一、おみくじを気にしていない
肝心の二人はお守り売り場にいた。
「病気平癒か……」
「一応買っておいたら? 効くかどうかわかんないけど……」
「うん、
少しだけ値段がしたが、今後の未来のために初めて購入する。
買い物が終わり、皆のところに戻る
やっとお待ちかねの屋台。
「そういえば、あの時の夏祭りも楽しかったよねん」
「うん、楽しかったじゃん!」
一年生の時に行った夏祭り。あの時もこうやって楽しく皆で屋台を周った
色々なことをして、部員の新たな一面が垣間見れた。そして、そこから絆も深まっていった。
だが、その後の
登壇した
苦い思い出もある夏祭り。その話を聞き、
「一族が悪いことした。すまない」
「なんで
「そうだよ。悪いのはあの女。今度会ったら、ギャフンと言わせてやるんだから」
「高校も違うし、会うことはないと思うけど……」
呑気に話している
「大丈夫、大丈夫」
誤魔化していく
懐かしい話と苦い思い出の話を終え、屋台の物を買っていく。
お互いに甘い気分になれた。
チョコバナナ、綿菓子、たこ焼きなど美味しいそうなものは片っ端から食べていく。
「やっぱりイカ焼きだよね」
「
夏祭り時以来、すっかりお気に入りになってしまった
「ハニー、じゃがバターあったよ」
「本当に!」
急いで屋台へと移動し、値段など気にせず購入。口の中へと勢いよく含んでいく。
「
「ゲホッ! ゲホッ!」
「
「大丈夫、だ……ゴホッ! ゴホッ!」
咳き込む割合が多くなり、ついに膝を地面についた。
「やっぱりガタが来てるんじゃ……」
「大丈夫、大丈夫」
なんとか治り立ち上がる。ちょっとだけフラついていたが、しばらくして正常になっていく。
「本当に大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
自分では体が衰えてきているのを実感できている。スタープロジェクトまで持つか心配している部分もあるが……絶対に持たせると覚悟を決めている。
「
「いや、大丈夫だから……練習しよう!」
「私なら大丈夫! もう直ぐ二次予選だし、スキルアップもしておきたいんだよ」
「
「何?」
「今日は帰って大人しくしておいたほうがいい。本番で倒れたら元も子もないんだよ」
「でも……」
「お願い」
手を握り、真剣な眼差しで
「アタシも
「ボクもじゃん」
「ありがとう」
開幕まであと十日。