「やっぱり凄い人通りだね」
「そうだな」
原宿竹下通りにやってきた
現在時刻十四時。イルミネーション点灯までは三時間ほどあるので、どこかで暇でも潰そうと画策する。
「何する?」
とは言っても、欲が少ない
ただ、
「クレープ食べたい!」
「おい、さっきご飯食ったばっかだろ」
「スイーツは別腹だもん!」
「わからねぇー」
昨今はスイーツ男子という言葉が当たり前に使われており、『スイーツ=女子』という風潮はほとんどない。だが、彼自身がそっち側の人間ではないので、理解は追いつかない。
「じゃあ、私だけ食べるから。それならいいでしょ?」
「わかったよ」
渋々了承する
原宿といえばクレープ。この場所に来たら絶対に食べる。一番好きなスイーツと言っても過言でもなかった。
クレープ屋に到着。人気店なので列ができていたが、
「こういうのが好きって可愛いなー」
いつもは大雑把な性格をしているが、ふと見せる女の子特有の可愛さ。それが
しばらく待ち、
「ジャーン! でっかいイチゴでしょ」
子供みたいに無邪気に見せびらかしてくる。その姿を見て不意に口が開いていた。
「
「好きだよ」
「そうなんだ」
今まで一緒にいたのに、彼女の側面しか見れていなかったことを
「口についてるよ」
彼の急な行動に
「どうしたの?」
「なんでもない、なんでもない。それより、この後どうする?」
「そうだなー、俺は
「じゃあ……」
天を仰ぎ、顎に手を当てて考え事をするが……原宿でしたかったことはもう終わった。(イルミネーショ以外)
行き先に悩んでしまう二人。そんな時……
「じゃあさ、猫カフェとかどう?」
意外な提案で
恥ずかしそうにしながら言葉を紡ぐ
「俺、猫好きなんだよ。
「うん、猫派か犬派かって言われたら猫が好きだよ。でも、一番は熊なんだけね」
猫カフェにいけることにテンションを上げる
目的のビルに入り、エレベーターに乗る。
「楽しみだね」
「お、おう……」
可愛い猫ちゃんたちに会える嬉しさが、二人の気持ちを高まらせる。
エレベーターの中で期待を膨らませていると目の前の扉が開く。
念願の
入った瞬間に温かい雰囲気の空間だと感じた。壁や床などは全面的に
肝心の猫が目の前を通り、目の端に入る。
「可愛いー」
二人ともメロメロになる。
視界を見渡すとたくさんの猫がいた。
スコティッシュフォールドやマンチカン、三毛猫など多種多様だ。
「おいでー」
猫を丁寧に撫でながら、
「こういったところは初めてか?」
「うん。ちょっと勇気がなくてこれなくて……」
いつか来て見たいと思っていたが、結局これずじまい。ちょっと勇気がないと自分が情けなくもなる。
そんな彼女を
「来たことあるっていっても俺も
「そうなんだ」
「でも、今日ここに来れただろ。また一歩成長できたって思えるんじゃねぇか」
「ありがとう」
二人は笑い合う。その後もしばらく雑談は続いた。
「そうだ! おやつでもあげてみないか?」
「おやつ?」
「あぁ、サービスでやってるんだよ。まぁ、おやつ代は払わないとだけどな」
おやつ代は
食べる姿が愛らしく、見ているだけで癒される。
「美味しい?」
返答などしないことはわかっているのに、なぜか動物には話しかけてしまう。無意識に甘い声になり、優しい微笑みも向ける。
美味しそうに食べる猫。すごく可愛かった。
他の子にもあげた。まるで自分が飼っているかのような錯覚にも陥る。
*****
「あんな
「そうなの?」
「うん、私と一緒の時には絶対に見せない笑顔。やっと、大切な人ができたんだね」
「それより……俺たちまで入る必要なかったんじゃね?」
一緒に猫カフェについてきたことを
「可愛いからいいじゃない」
「いいじゃん!」
「なんか流されてる気がするけど……」
*****
「そろそろかー」
「そうだね」
気づけば窓の外はだいぶ日が暮れてきていた。
餌を食べている姿を見たり、おやつを与えたり、昼寝している姿を観察したり、ありとあらゆる猫の姿を見れた。
名残惜しいが、
二人は手を繋ぎながら、原宿に来た本来の目的を達成させるために歩いて行く。
到着。まだ点灯前なのにイルミネーションの近くにはたくさんの人がいた。
「楽しみだね」
「ロマンチックだね」
「そうだね」
偶然にしてはタイミングが良すぎる。だが、それは最高のクリスマスの日を演出してくれた。
雪がちらつき始めて一分後、イルミネーションが点灯。
雪や街の光と合わさり、最高に綺麗な光の群生になる。
二人は心を奪われ、頭の中を空っぽにして楽しんだ。
「蛍の光、窓の雪、
不意を突かれた
「私、この歌好きなんだよね」
「どうして? 確か別れの歌だよね」
「そう、別れの歌なんだけど……寂しさを感じさせないっていうか……なんか、好きなんだよね。ごめんね、変なこと言って」
上手く言語化出来ない
「綺麗だね」
「あぁ、綺麗だな」
目の前で点灯するイルミネーション。光などいつも見ていて慣れているのに、なぜか蛍光灯などには出来ない幻想さを持つ。だからこそ、人々の心を打つ。
「私ね、今が一番幸せだよ」
その言葉の直後、
「
「恥ずかしいから言わないで」
背伸びして無理に行った。それだけ
デートの時間が終わる。いつまでも見ていたい光景。いつまでも続いてほしい時間。
でも、この時間は一生は続かない。そして、運命の日が来ることも変えられない。
グレていた時は思いもしなかった。希望などなかったし、やりたいこともなかった。毎日が退屈で、一人になれる夜に早くなってほしいと思っていた。
だが、今は時間が止まってほしいと思っている。この時間が一生……そして……
*****
「帰ろうか」
二人が気になり、
「よかったね。