「ごめんね。私が弱気になって……」
しばらくして落ち着いた
「そうだ! ご飯食べて帰らない。久しぶりにあのハンバーガー食べたいんだ」
暗い雰囲気になってしまったので、
「じゃあ、行こうか」
あの肉厚なパティとカリッとしたポテトを楽しみにする
声の出どころに振り返る二人。そこには、
そこまでして追いかけてきた
「ごめんなさい。二人にしてほしいって言われたのに追いかけてきて」
息を整えながら、しっかりと前を向く。そして、
*****
「ただいま」
暗い声で玄関を潜る。
心が追いつかないほどの現実を突きつけられた春樹は、今、誰とも話す気分になれなかった。
自室へと直行していく。だが、その暗い後ろ姿をたまたま
「
兄弟だ。子供の頃から付き合いのため、表情ひとつでなんとなく気持ちを察することはできる。
今の
気になった
扉を少し開けて部屋を覗く。
そこにはベッドに座り込みながら、何かに悩んでいる弟の姿が見えた。
その姿を見て
「バレてたかー」
取り繕うようにいつもの自分を演出し、部屋へと入り、
ヒリヒリとした感覚が空間全体に広がり、重苦しい。声をかけようにも、喉が上手く機能してくれず、発声機能を忘れてしまったかのような感覚に陥る。
「兄貴、俺どうしたらいいんだろうな」
「何かあったのか?」
「あぁ、実はな……」
「俺、スタープロジェクトで本気で優勝を目指せると思った。
自分の感情を整理しながらも、本音を吐露してしまう。いつもなら恥ずかしい言葉も今では口にすることができる。
なんでだろう。自分は昔からずっと不器用で、言葉にするのは難しいはずなのに……言葉が止まらない。
それは兄だからという感情もあるだろう。だが、兄と和解できたのも、自分に正直になれたのも、全て
「
「
人の死など目の当たりにしたことのない
またも暗い表情を浮かべていると、兄が肩に手を置き、
「正直にぶつければいい。
兄の言葉は
兄の言葉を聞いて、
「異性としてじゃないぞ! 同志としてだからな!」
言った後に勘違いされないように、すぐに訂正していく。
弟の言葉に兄は微笑みを向け、「このー」と、頭をくちゃくちゃにする。
そこには子供の頃に戻ったかのような、仲睦まじい兄弟の姿があった。
しばらく、じゃれあった後に
*****
同時刻。
「なんでまた……やっと会えたのに……」
四年前、最愛の人である
不慮の事故だった。故に、突然訪れたその日は彼の心の時間を止めてしまった。
彼が現実を受け入れられたのは、彼女が死んでから一週間経った頃。だが、心の奥がぽかんと開いてしまったような感覚は一ヶ月は治らなかった。
「
気がつくと姉が目の前にいた。
「姉ちゃん……」と呟くが、今の
「夕飯できた……って言いたいけど、何かあったの?」
姉の言葉で
思い切り抱きつき、涙腺が爆発しそうなほど号泣する。
弟の姿を見て、姉は昔のように頭を撫でながら「よし、よし」と宥めていく。
しばらくはその時間が続いた。
落ち着きを見せた
話を聞かされた姉は言葉を失った。が、気持ちを整理させ、取り繕うように言葉にする。
「そんなことがあったんだ」
「なんだよ。その言い草……」
「どうしたの?」
「どうしたもこうもないだろ! 人が死ぬんだ! なんでそんなあっけらかんとしてられるんだよ!」
姉はそんなつもりはなかった。だが、
壁を貫通するほどの怒声。声は中世的だが、やはり男らしさがあり、大声を出すだけで恐怖を感じる部分はある。
あまり見ない弟を見て、少しだけたじろぐ姉だったが……
「今更、変えられない事実を悩んだってしょうがないじゃない!」
「なんだと……」
自分が死ぬわけじゃないから……あくまで、弟の知り合いというだけだから……ふざけるな! 僕が、僕がどれだけ彼女のことを思ってきたのかわからないのか!
怒りで頭がおかしくなりそうな
「そうやって
次に紡がれた言葉は
姉の優しさに気後れしていると、姉は更に言葉を紡ぐ。
「なら、彼女のためにしてあげられることをしてあげなよ。今回は前回と違って猶予があるんだから」
姉の目から涙が流れていた。
彼女としても、少しだけ
「後悔しない選択をして」
姉の涙を見て、自分が何をできるのかを思案していく。そんな時、彼のスマホに着信が入った。
*****
「でも、あてぃし……どうしても伝えたいことがあってここに来ました。聞いてくれますか?」
彼女の言葉に
彼女の
心が軽くなり、自分の胸中を表面に出すことができる。
「昔のあてぃしは勇気もなくて、臆病で……でも、
涙を浮かべながら、熱弁する。
雪がチラチラと舞う街中で、二人は熱い視線を交わす。
これから紡がれる言葉がどんなものなのか。それを待っているだけで胸の鼓動が速くなってくる。
「あてぃしを
大切な人の死。それを実感し、
彼女の言葉に
彼女の方へと寄っていき抱きしめる。
「もちろんだよ。よろしくお願いします」
「俺たちも忘れるなよ」
二人の姿を見て、
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年内最後の更新です。2024年、この作品を読んでいただきありがとうございました!また来年もよろしくお願いします!(次回更新は1月1日を予定しております!)