バンドにこだわる理由。そう聞かれて
だが、
しばらくして、
「
一度区切り、力強く宣言する。
「スタープロジェクトで優勝してメジャーデビューしたいと思ってる。そうすれば
「なんだ、大した理由じゃねぇのか」
返ってきた答えが想像していたものと違い、
「結局やってることは兄貴たちの後追いか……」
「そんなこと……」
「ないって言いたいのか? だけどな、お前。自分が矛盾したこと言ってるって気づいてねぇだろ?」
矛盾。そんなつもりはない。自分はただ、音楽を紡いで、人に笑顔になってもらいたいだけ。そのために活動してきた。
何ひとつ気づいていない美月に、
「スタープロジェクトで優勝したいって言ってのに、勝ち負けにこだわらないでやれるって言ってんだよ。そんなの無理だ。ガチでやるか、趣味でやるか。どっちか選ばなきゃならねぇんだよ。そんな生半可な覚悟でやってると音もしょぼくなっちまう。前にお前が送ってきた歌のようにな」
あの歌は確かに
ただの自己の押し付け。それが美月のやっていることだ。
ピアノで否定された
「ちょっと言いすぎだ」
「言いすぎ?」
「あぁ、
どんどん覇気がなくなっていく
「お前は音楽の素人だから、スタープロジェクトを知らねぇのも無理はない。でも、あれは生半可な気持ちで勝てるもんじゃねぇんだよ」
春樹はスタープロジェクトについて説明する。
四年に一度開かれるプロのバンドを選出するための大会だ。
キャッチコピーは『次世代の申し子、ここに集まれり』
日本だけでなく、世界各国から応募が殺到し、事務所と契約していないバンドマンなら誰でも参加可能。
それだけならまだしも、制限人数はなしで、審査員特別賞などの賞は存在しない。
一千万、下手をすれば億を超える参加人数の中からたったの一組だけがプロデビューできる鬼門の道。
そのためか、この大会で優勝したバンドは高確率で有名になれ、第一線での活躍が確約される。現にこの大会から選ばれた対象者二名は、今も第一線で活躍している。
「兄貴たちもスタープロジェクトにエントリーした。でも、予選落ちだ。それだけ厳しい大会なんだよ……」
悲しい声色で
「俺の前で誓え! 本気でバンドをやっていくって!勝ちにこだわって、やっていくって! じゃなきゃ、俺は一緒にはバンドはやらない」
「そこまで言わなくても……」
「俺がバンドをやるのは、本家の奴らに復讐するためだ! 見返すためだ! こんな生半可な気持ちでやって欲しくない。それ以前に、こんな奴が兄貴と同じ舞台に立って欲しくない!」
想いが強いから、声を荒げてしまう。この場所がカラオケボックスだということを忘れて。
「そうだね……
「
険悪なムードになってしまったため、この日は解散。カラオケルームを出て、三人はそれぞれの家路に着く。
だが、その帰り道に美月は、自分の左胸を押さえる。そこには前までなかった大きな違和感があった。そう、しこりのような大きな違和感が……