決着をつけよう。彼の言葉には重みがあった。
鋭い眼光で睨みつけ、獲物を狩る肉食獣のように。
LEDライトが照らされ、周りは
彼女の母親はあまりの空気感に少し心配をしている。だが、
「
マイペースな
ヒリヒリした空気を一気に引き裂き、すぐに日常を取り戻す。
彼女の行動により、彼女の母親の心配も吹き飛び、浴場へと案内する。
「服ここに置いておくね」
異質な性格をしている彼女だが、常識だけは持っているので、お茶菓子を用意して自室へと戻っていくが、ふと……
「あれ?
教えた覚えがないので、彼女は少しだけ恐怖を覚える。彼自身が悪い人ではないので何もされないだろうが、シャワーから出てきたら聞いてみようと思う。
シャワーを終えた
「お邪魔します」
「ようこそだよ! いらっしゃい」
快く歓迎する
「そういえばさ……なんで私の家知ってたの?」
「あぁ、それね……金髪の男が教えてくれたんだ」
「金髪?」
彼自身が名前を知らないらしい。
だが、
そう
彼に教えてもらったという事実を知り、安堵する。同時に、彼が
「俺、やっぱり音楽が好きだ。本当は、兄貴のように音楽で活躍したいって夢もあったんだ」
「どうしたの? 急に」
『決着をつけよう』などと言われたから、完全に拒否されるものだと思っていた。
「この思いだけは伝えておきたかった。やっぱり、偽れない。でも……本家の人間からされたことは忘れられない。
その後の言葉は口にするのも心苦しいのだろうか。
「劣性遺伝は
少し音楽の才能がなかっただけでここまで言う必要はない。それだけ、本家の人間はエリートを輩出することしか考えていなかった。家系の名誉を守ることしか考えていなかったのだ。
本家が放った言葉で
それでも何もできないのが現状だが。
最悪の家庭状況を聞かされ、
「そんな顔すんなって。お前は何も悪くねぇじゃねぇか」
「でもそんな言葉って……」
「今は気にしてねぇよ。
無理やり笑顔を作り、
彼の心遣いに
「ありがとう。話してくれて。でも、なんで急に心変わりしたの?」
「あぁ、それか……あの金髪の男がな、言ってくれたんだ。復讐したり、見返したいなら結果で示って。動機なんてなんでもいいって。そんなこと言ってくれる人、俺の周りにはいなかったから。俺、嬉しくって……もう一度音楽と向き合ってみようと思えてな……感謝してるよあの男には」
「
別のことを考えていると、
「でもよ、あの歌はないな。ストレートに想いを伝えすぎ。ちょっとダサいよ」
「悪かったね! あれでも一生懸命考えたんだけどな……」
自信作だったため、
「俺が音楽をやるとしたら、あの男と一緒にやりたい。だから、しょうがなくお前のバンドに入ってやるよ。あくまで俺が認めたのはあの男であって、お前じゃねぇからな!」
照れ隠しの言葉だと美月は勘づいていたが、手を取り、「大歓迎だよ。よろしくね」と彼のメンバー入りを了承。話がまとまり目的を果たした
「おはよう!」
扉が開かれ、
「なんでコイツがいるの?」
「なんでって、お前がここに来いって言ったんだろ?」
急な進展についていけない
「
「『なったんだよ』じゃねぇんだよ! 昨日今日の出来事だぞ! 展開が早すぎるだろ!」
だが、事実は事実だ。一回話を整理して目の前の現実を受け入れていく。そして、いつも通り練習に入る。
「
「いいよ!」
「悪いか! 買う金がないんだよ」
毎日練習しているので、確実に上手くなっているが、スムーズに変更できないコードがあり、初心者の
あまりに
「なんだよ!」
「いや、俺もそんな時期があったなって思って。懐かしいなと思ってな」
「
「あぁ、一応ドラムをな。まぁ、兄貴のやつを借りてただけだから、自分のは持ってないんだけど」
彼の言葉を聞いて、
「どうしたんだよ」
「これで、これでバンドができるよ!」
「バンドってのは五人必要なんじゃないのか?」
「マジで素人なんだな……まぁ、説明してやるよ。バンドって言っても一概にいろ色々な型があるんだ。で、その中の一つにキーボード・トリオってものがあるんだよ」
キーボード・トリオとは、キーボード、ベース、ドラムのパートで構成されてるバンドの形式。だが、ベース部分をギターに変更しているケースもある。
その場合、キーボードを担当する者がベースの部分を補わないといけないのだが、次世代の星と呼ばれていたピアノ奏者──美月であればベース部分をカバーするのは容易いだろう。つまり……
「
「バンドはできるってことか」
「そういうこと!」
一年。やっとの思いで念願が叶う美月。これで憧れの
「悪い、俺自分のドラムセット持ってないんだわ」
『えっ!』
「なんで! ドラムやってたんでしょ? どうして!」
「兄貴の借りてただけだし、第一、叩けるっていっってもちょっとだけだし……
ここでも立ちはだかる壁。しかし、
こうなればやる行動は一つだった。
「じゃあ、ドラムセットを買いに行こう!」
思い立ったらすぐ行動。それが
いつもの無鉄砲さに