「誰だよお前」
急に呼び止められた春樹は、呼び止めた
二人は初対面。こうなるのは当然といえる。
雨の中、数秒睨み合う状況が続く。
人通りが多い場所でのいざこざ。周囲の人間の視線が向けられるが、二人には関係ない。
────
「ここじゃ迷惑になる。場所を変えよう」
「はぁ? なに勝手に話進めてんだ。テメェと話すことなんて……」
「いいから来い」
話を遮り、無理やりに
「何が目的だ? それに、なんで俺があの場所に来るのも知ってた」
歩きながら、疑問に思った事を翔兎にぶつける。
「何が目的って? まぁ、そっちは代理人だよ。お前に会いに来た女の。で、あの場所に来るのを知ってたのは完全に予想だけどな」
「予想?」
「あぁ、お前、映画見たがってただろ? でも、
賭けに勝った
しばらく歩き、二人は目的の公園に到着する。
「はぁー、またそれかよ。いくらお願いされても俺は音楽はやらない」
「やっぱりな。俺が来て正解だったよ」
「どういう意味だ?」
「簡単だよ。お前を説得するのは
「ちょっとは話を聞こうと思ってくれたか?」
「俺な、ただヤリたかっただけなんだよ。
「一体なんの話だ?」
「まぁ、聞けや。まだ導入部分だろ? ちゃんとした話になるから心配すんな」
「でもな、ある時転機が訪れてな。お前の兄貴のライブを見に行って、一気に心を引き込まれた。音楽ってすげぇって。でも、決して届かない距離じゃないとも思えた。凄いよ、お前の兄貴は」
「結局、兄貴かよ」
二人とも
彼にとって憧れで、一番比較して欲しくない人物。彼に届かないから彼は悩んでいるわけで……
だからこそ
「お前は今は音楽好きなんだろ? だったら俺とは分かり合えない」
「本当にそうか? 本当は音楽が好きなんだろ?」
今の言葉は
「俺が音楽を好き? 笑わせんじゃねぇよ! そうじゃないからこうなってんだろ!」
「じゃあ、なんで
だが、
「それがお前が音楽を好きって証拠なんだよ。諦めきれねぇんだよお前は。もう認めたらどうだ?」
「無理だ……親父やお袋、兄貴の想いを踏み
「何を根拠に……」
「俺も非行少年だったからな。そんな俺でも変われた。まぁ、完全にはまだだけどな」
父親が逮捕されてから祖父母の家に引き取られ、そこで環境に馴染めず、軽い不良をやっていたこと。
父親に引き取られてからも、夜遅くまで家に帰らず警官に補導されていたこと。ナンパもしてたことも。
人の過去には色々なことがあり、一概には判断できないことを
「話してくれてありがとう。でも、俺はお前とは違う。求められる結果を出せる自信もない」
「羨ましいよ……」
「そうか?」
「あぁ、俺は何をやっても
現実は無常だ。背負ってるものがデカければ迂闊な行動はできない。
「だったら、見返してやれよ。お前の音楽で。結果を示して、
「だからそれができねぇって言ってんだろ!」
「ルールに縛られるんじゃなくて、お前がルールになれ。お前が
投げかけられた意外なセリフに、
「はぁ? 何言ってやがる! そんな
「できるさ。いや、やるんだよ」
だが、音楽に信念を持っている
しかし、
「モテたい。金が欲しい。始める動機なんてなんだっていいと俺は思ってる。必要なのはそこに向き合う姿勢だろ?」
「お前が本当に音楽が好きならここに行け。お前のことを待ってる人がいるから」
言葉を残した後、
「わかってんだよ。本当の気持ちなんて……」
一人呟く。そんな彼の目には涙が浮かんでいた。
「はーい」
インターホンが鳴り、美月の母が対応する。ドアを開けると、ずぶ濡れの
「どうしたの!」
あまりの状態に彼女の母親に心配される。
そんなことは置いておいて、
「いるけど……そんなことより入って」
彼女の母親は急いで中に入れてくれた。その後、
「お母さんどうしたの?……って、
階段を降りてきた
自分の家に
驚いている
「そろそろ決着つけようぜ。もう、お前に付き