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第43話 歓迎会③

カフェの厨房で忙しく動き回るターニャたちを見つけた。


邪魔にならないタイミングで、話しかけてみる。


「ターニャ、何か手伝おうか?」


「あ、タイガさん。こんばんは。今日はタイガさんの歓迎会だと聞きました。お手伝いをしてもらう訳にはいきませんよぉ。」


「でも大変じゃないか?」


「大丈夫です。もう少ししたら料理をテーブルに並べるだけですし、ギルドマスターから何人かにお手伝いしてもらえると聞いていますから。」


「そっか。何かあったら声をかけてね。」


「はい。ありがとうございます。」


微笑むターニャに手を振って厨房を出た。


「あっ!?タイガ、ここにいたんだ。」


声のする方を見るとニーナがいた。細長いトランクのようなケースを持っている。


「リルに呼ばれて来たよ。あと、蒼龍が仕上がったから持ってきた。」


「おお、マジで!」


「ふふっ、タイガの目が子供みたいに輝いてる。何かうれしいよ。」


近くにいるフェリやパティが、「むむむ・・・」と声にならない唸り声をあげている。


なんだ?


どうした?


「見ても良いかな?」


「うん。早く見て欲しい。」


テーブルにケースを置き、中の蒼龍を手に取る。


人が多いので鞘から出す訳にはいかないな。


「おおっ!それがタイガの装備か?刀・・・いや、大太刀というのか?」


さすがにアッシュは刀の分類を知っているようだ。


「ああ。歓迎会までまだ時間があるから、ちょっと試し斬りしてくる。」


「それなら俺も見たいぞ。」


「あ、私も!」


「もちろん私も行くぞ!」


結局、フェリ、リル、ニーナ、パティたちも見学することになった。


他にも、「おっ、なんだなんだ?」という感じでギャラリーがついてくる。


ホールから人が減ると、ターニャ達の給仕がはかどるのでちょうど良いのかもしれない。




「それで、何を斬るんだ?」


「そうだな・・・」


修練場に出ると、アッシュがそんなことを聞くのでギャラリーを見回す。


ヤバいっ!


奴と目を合わせるな!!


的な感じで、ギャラリーは俺の視線から目をそらしていった。


おっ!


ラルフと目が合った。


じっと見る。


ラルフが見返してくる。


じっと見る。


ラルフが汗まみれになってくる。


じっと見る。


ラルフが意識を失い、その場に卒倒した。


胆力が足りないな、あいつは。


修練場にあった打ち込み用の丸太をセットする。


直径が20cmくらいある。無手による打撃練習用のものだ。


「え、まさかそれを斬るつもり?」


ニーナが心配そうに聞いてきた。


普通に考えると、刀で斬ろうとすると刀身がもたない。


「大丈夫。折ったり刃こぼれさせたりはしない。」


「わかった。タイガの腕を信じる。」


ニーナは腕のいい刀工だが、刀の本当の切れ味を知らないようだ。


そもそも、使いこなせる者がいないのだから当然といえた。


刀は銃弾をも切断する。


鉛でできた拳銃弾なら、素材が柔らかいので大した力もいらない。


鉄製の甲冑や竹、丸太を斬ったことがあるが、刀身に余計な負荷がかからなければ、恐ろしいほどの切れ味でスパッと斬れるのだ。


いかに集中して斬るか。


斬線をぶれさせることなく斬るか。


ただそれだけだ。


刀工が魂をこめて刀を鍛えるのと同じように、剣士は一瞬にすべてをこめる。


間合いを計り、呼吸を整える。


ゆっくりと腰を落とした。


ギャラリーが沈黙する。


抜刀。


居合い斬り。


青い稲光のような線を描き、一瞬後に鞘に納める。


ゆっくりと刀を仕舞い、最後に鍔を鳴らす。


カキィン。


「・・・・・・・・・。」


丸太に変化はない。


「なんだ?はずしたのか?」


「何か青い光が見えなかったか?」


ギャラリーがざわつく。


俺は気にせずに、左手に持った大太刀を目線まであげて鞘を見る。


「さすがニーナ。鞘の調整も完璧だよ。」


振り返って笑顔でニーナに話しかけた瞬間、


ゴッ!


斜めに断ち斬られた丸太が、地面に落ちた。


「「「「「!?」」」」」


その場にいた全ての者が呆気に取られていた。


「ニーナ、刃こぼれがないか確認して欲しい。」


「う、うん。わかった。」


ニーナを安心させるために、刀身を確認してもらう。


「線傷ひとつない・・・すごいわ!」


ニーナは驚愕という言葉がしっくりとくる表情をしていたが、すぐに鍛治士の顔となり満面の笑みを浮かべた。



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