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第41話 歓迎会①

ホテルで目が覚めた。


この世界に来て三日目。


エージェントの時には味わえなかった深い眠りのおかげで、朝の目覚めが良い。


股間の相棒も平常運転で何よりだ。


朝食を取ってから、約束の時間に間に合うように外に出る。


ターニャの家に行き、借金完済の話と賃貸契約をする予定だ。


ホテルから歩いて十分もかからずに到着する。


約束の時間の五分前なのだが、家の前でターニャが出迎えてくれた。


「タイガさん!おはようございます!!」


「おはよう。今日は休みなの?」


確か美容室は、朝の九時からオープンだったはずだ。


「はい。毎週月曜日は定休日なんですよ。」


「そうなんだ。」


どこの世界でも、理容業界は月曜日が定休日なのか?


まぁ、その方がわかりやすくていいが。


店の中に入り、母親と弟くんに朝のあいさつをして本題に入る。


「本当に、本当にありがとうございました。」


涙目で礼を言う三人。


「前にも言いましたが、俺にとっても住まいや美味しい食事の拠り所として、ここは大事な場所なんです。気にしないでください。」


「そんな風に言ってもらえるなんて。良かったら、お部屋専属のお手伝いとして、ターニャを住まわせますよ。」


とんでもないことを言い出す母親だな、おい。


ターニャが困ってい・・・ないな。


「私なんかで良ければ。」


頬を染めて、そんなことを言ってる。


「魅力的なご提案ですが、大丈夫ですよ。家事は好きだし、ターニャさんも美容師の仕事が忙しいだろうから。」


ものすごく残念そうな目で、こっちを見ないで欲しい。


ターニャはかわいいけど、そして胸も大きいけど、その話に乗ったら結婚まで突き進むんじゃないのか?


まだそんな気はない。


「あ、そうそう。一つ、依頼があるんですよ。」


話をすり替えた。


「依頼、ですか?」


昨夜にアッシュから頼まれていたことを話す。


「急な話なんですが、今夜はギルドで宴会の予定があるんです。そこで出される食事を提供してもらえませんか?予算はギルドから出ます。」


「えっ!?」


ギルドで俺の歓迎会をしてくれるそうだ。そこで提供するブュッフェスタイルの料理を、ここに依頼してくれないかとアッシュからは言われている。


ギルド内のカフェでは準備が難しく、デリバリーを考えて近い立地にある美味しい料理が出せる店としての選択らしい。


本音は貸金業者のせいで経営難に陥っているので、手助けをするつもりなんだろう。


スレイヤーたちが美味しいと感じれば、店に足を運ぶ者も出てくる。


なかなかの配慮といえるだろう。


「そう言うことなら、喜んでお受けします!」


弟くんが気合い十分に答えた。




今夜の歓迎会と賃貸契約の話を最後まで詰めて、部屋の鍵をもらった。


家具屋に行き、購入したものを部屋に運んでもらうように依頼する。すぐに手配をしてくれるようだったので、搬入してもらうことにした。


部屋の掃除は済ませてくれていたので、これで今日から住むことができる。


異世界でようやく新居を構えた。


賃貸だけど、十分すぎる内容だった。




ホテルをチェックアウトする。


荷物は着替え程度しかないので、移動させておいた。


考えてみると、買い物まわりばかりで、街をしっかりと探索していなかったことに気づく。


エージェントは知らない街に出向いたら、まずは実地調査を行うのが習性なのだが、異世界に来て気持ちが浮わついていたのか失念していた。


店を覗くと、ターニャは歓迎会の料理の仕込みを手伝っているようだ。


ひとりで行くか。


今日はフェリも学校に行っている。


図書館でいろいろと情報収集をしておきたいが、リルが身元保証の申請が受理されるのに時間がかかると言っていたので、手続きが終わってからになる。




あてもなく街をぶらついた。


繁華街を歩いていると、午前中なのに艶かしい一画が目に入った。


裏通りに面した数件だけの区画。


娼館だ。


ムラムラと好奇心が湧いてくる。


まだ昼前なのに開いているようだ。スレイヤーがよく利用するのかもしれない。


危険にさらされる職務についていると、かなりのストレスがかかる。その捌け口として考えると、あっても不思議ではないのだ。


入ってみたい衝動が突き上げてくるが、店から出てきた一人の男を見て、気持ちが冷めた。


目が合う。


「・・・・・・・・・!?」


悟りを開いたような清々しい顔をしていたが、俺を見てフリーズした。


そして、目を見張るようなスピードで反転し、走り去って行く。


なかなか良い動きをするじゃないか。


ラルフよ。




統治機関がある所を中心に、円を描くように放射状に広がった都市。


中央部はいくつかの区画に分かれ、ギルドや繁華街、学校などの人が集まる施設がそれぞれのエリアで配置されている。


住宅街は貴族と平民で住み分けた区画となり、中央部を囲むように広がって、外部と分断する防護壁まで続いているようだ。


都市としては、しっかりと計画された機能的な作りだと言える。




街の探索を大まかに済ませて昼食でも取ろうかと考えていると、防具屋を見つけた。


大きな店構えなので入ってみる。


フルプレートの鎧から簡易な胸当て、ブーツやシャツなど戦闘用の装備や衣服が揃っていた。


大太刀を身につけるための小物がないか探してみる。


袴と違って腰にはさせないので、両手を使えるようにしておきたい。


小物が置いてあるブースを探してみるが、商品が多すぎてなかなかみつからない。店員を呼ぼうにも近くにはいなかった。


カウンターまで聞きに行くか。


そう思ってると、


「何か探してるの?」


勝ち気な声が下の方から聞こえてきた。


声の方を見ると、銀髪の女の子がいる。150cmそこそこくらいの身長なので、見下ろすような感じになった。


くりっとした大きな瞳と、小柄ながら出るとこは出ているプチグラマーな体。


ついムラムラしてしまった。


ロリフェイスだが、少し気の強そうな顔をしている。


声はちょっとハスキー。


「えーと、大太刀を腰に吊るすための小物が欲しいんだけど。」


「大太刀って、何?」


ああ、普通は知らないよな。


「東方の国固有の刀って言う剣のでっかい版かな。」


「へ~、そんな武器があるんだ。今持ってないの?」


「うん。調整してもらってる。」


「そうなんだ。そういう小物ならこっちだよ。」


案内してくれた。


後ろから歩いていると、プリプリしたお尻をしている。


よく見えるように少し距離をあけた。娼館の前を通った時のムラムラ感が再発していた。


犯罪者にならないよう自重しよう。



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