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第17話 グラディス視点2

 リザベルがいなくなって捜索範囲は王都だけじゃなく、近隣の街とかにも捜索範囲を広げてはいるが、リザベルらしき人物を見た人はいなかった。


 どこに消えた?


 手紙のことが原因なのだろう。だが、リザベルが自分で考えられない。


 もし、どこかに消えるとしたら彼女みたいな大人しい貴族令嬢が一人でするだろうか?


 彼女のことだから、着替えとかお気に入りの本なんかは絶対に持って行くだろう。そうしたらそれなりに荷物があるだろうから、一人で行動なんてする訳がない。


 だとするとやっぱり僕に恨みを持つ者の仕業だろうな。


 今王都にいる奴で僕に恨みを持つ者を片っ端からリストアップし、リザベルの友人の公爵令嬢にも協力してもらおうか。


 彼女の家の影響力を考えたら僕だけで行動するより早い。彼女は僕のことをあまりよく思っている訳ではなさそうだが、彼女の友人のリザベルのことはあれこれと気を使っているから、リザベルがいなくなったことを伝えれば、相手が僕でも協力してくれるはずだ。


 彼女にまとわりついている隣国の奴が邪魔になってくる。


 あいつをちょっと追い払うと約束すれば、多分快く承諾してくれるだろうと思い、公爵家に赴いた。


 最初、公爵令嬢は僕の顔を見て逃げようとしたが、リザベルが消えたことと協力すると言えば態度が変わり、僕の話をようやく聞く気になったらしい。


「リザベルがいなくなったということは本当なのね?」

「ああ、疑うのならリザベルの家の使用人に聞いてみればいい」

「分かったわ」


 リザベルの友人のマリアとかいう名前の公爵令嬢は頷くと近くに控えていた使用人に指示を出して、行かせた。


「正直私はあなたのことが好きじゃありません。ですが、リザベルは別です。リザベルは私にとって大事な友人ですからね……それと、本当にあの方をお父様の気分を害さずにあちらのお国に戻すことが出来るのですか?」

「その件は多少時間をくれるのであれば簡単に」

「出来るだけ早くお願いしますわ」


 そういう公爵令嬢の顔はあまりにも真剣で、そちらがメインじゃないのかと言いたくなったが、今彼女の機嫌を損ねるのはよろしくないので頷くだけにしておいた。


「学園と王都は探したのですよね。リサがあなたはともかく私たちに何も言わずに消えるとは思えません。一応カリナの方にも今聞きに行かせていますが、あちらにいるかは不明ですよ」

「ああ、問題はリザベルが見つからなかった場合だけだから」

「その時は私たちを巻き込まないでくださいね」

「善処するよ」


 少し顔が青ざめているような気もするが、彼女はリザベルの大事な友人だ。そんな公爵令嬢に害をなす訳ないじゃないか。そんなことをしたらリザベルが泣いてしまう。


 リザベルを泣かせる趣味はないからな。だけど、このままリザベルが消えてしまえばその限りではない。


 この国で生まれたけど、僕には愛国心なんてものはない。リザベルにいない国なんかどうなろうと知ったことじゃない。


 そういった意味を込めて微笑めば、公爵令嬢は全面的に協力してくれることを確約してくれた。


「私は貴族令嬢を中心にリザベルの行方を探ってみます。それと王都の外はお父様に協力をお願いするか……ああ、カリナのところに最近ステファン様がよくおいでになっていらっしゃるそうなのでステファン様のお力も借りますか?」

「あいつはいらない」


 あいつは何か余計なことして捜索を長引かせたり、リザベルに不名誉になるような噂になってしまうかもしれない。


 それにあんなのでも一応王族。王族が一貴族令嬢の捜索をしたとバレたらよからぬ噂が流れてしまう。そんなのリザベルが無事に戻って来たとしても、彼女は望まないだろう。


 それに、リザベルと噂になるんだったら僕以外の人間となんて許せそうにない。


 もし、そんな奴がいるのならそいつのことを僕自身の手で葬り去ってやる。


 悪いことを考えていたせいか、気付いた時には公爵令嬢が逃げ出しそうになっていた。


 それを捕まえて宥めすかし、公爵令嬢が集めた情報を元に学園の中に潜んでいた犯人らしい令嬢たちをとっちめて、彼女たちの親の不正まで暴いて彼女たちを学園から追放し、リザベルを閉じ込めたという場所に赴く。


 彼女たちが自白した小屋にはリザベルの姿が見当たらず、辺り一帯を捜索し、彼女を見つけた時には気絶していて、あいつらを学園から追放するだけでは足りなかったのかと怒りに身を任せ、そのまま侯爵家の力を使い彼女たちを国外追放へと追いつめてやった。


 てっきり僕に恨みを持つ者の仕業だと思っていたのに、ただの女の嫉妬だなんて想像出来なかった。


 あの女たちは自分たちの身分だとて平民とたいして変わらない身分なのを気にして上位貴族に取り入ろうとしていたがそれが出来ず、むしゃくしゃしていた時に、タイミング悪く僕がリザベルに近付いたのが気に食わなかったと言っていた。


 そんなのただの八つ当たりでしかないし、その醜い感情は自分たちの中で処理しておけばよかったのに、わざわざリザベルを呼び出そうとしたり、危ない目に合わせようとしたり。


 お前たちが自分たちでしでかしたことで、お前たちだけで被害を出しておかっただけだ。


 僕の大切な人にちょっかいを掛けたのが悪い。


 せいぜい自分たちがしでかしたことの罪の深さを思い知るがいい。あいつらの泣き顔を見れて少しだけ溜飲が下がったが、完全に溜飲が下がった訳ではないので、やっぱり息の根を止めておくべきだったか?


 だが、このことはその内リザベルにも伝わるだろう。


 今でさえリザベルに嫌われているのに、さらに嫌われるようなことなんてする必要はない。


 もしくはリザベルが目覚めて助けたのが僕だと知って、僕のことを意識してくれればいいんだけど。


 そう考えていたけど、リザベルの意識が戻ったという知らせはあったものの、お見舞いは遠慮すると何故か断られてしまった。


 もしかして、僕が助けたことを知らないとか?


 いや、それはないはずだ。


 お見舞いに行くという公爵令嬢にも念押ししたし、リザベルの家の使用人たちにも伝えておくように命令した。


 だから、リザベルが聞いてないということないだろう。そうなるとリザベルが僕に会いたくないと考えた方が自然だけど、それは考えたくはない。


 リザベルに庭に咲いていた花と見舞いの言葉を綴った手紙を使用人に渡すように命令してリザベルからの返事を待った。

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