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第7話

 あの日はそのままマリアの家に泊まってああでもないこうでもないと話し合ったが、解決策が浮かばない。


「あの方たちとあたしたちの身分が逆だったら簡単に遠ざけることは出来たでしょうね」

「グラディス様は? あの方身分がどうのこうの超越しちゃっているじゃない」

「まあ、あの方はね……」

「……諦めてグラディス様が飽きるまで付き合うしかないわね」

「それっていつよ」

「あたしたちに分かる訳ないじゃない」 


 カリナの言葉にがっかりする。


 立場が違ったとしてもあの方なら、そんの関係ないでしょうよ。あの性格で成り上がったのだから。


 グラディス様がどうやったらあたしに飽きてくれるのか知りたいのに、全然役に立たないわ。


「登校したくない……」

「そうね。このまま私の家で過ごす?」

「賛成」


 みんなでサボろうかと決めた辺りで、使用人たちによって無理やり学園に捨てられてしまった。


 あたしたち貴族なのにマリアの家の使用人の扱いって酷くない?


 そう思ってマリアに聞いてみたら、あの人たちも貴族らしい。


 貴族をも使用人に出来る公爵家ってすごい。


 あたしの家の使用人なんて全員平民だってのに。あ、でも、王族だって貴族が仕えているんだもん。高位貴族だって貴族の使用人がいたっておかしくはないよね。


 羨ましい。


 マリアの家とあたしの家の立場逆転しないかな? 無理かな。お父様の事業がワンチャン大成功をおさめたりして爵位上がったりしないかな?


 マリアにそう愚痴ったったら行儀見習いとかで、王宮に行くとかあるよとかとんちんかんなことを言ってきた。あたしが想像しているのは、うちの使用人を貴族に変えられたらって言うことよ。


 こきつかわれる立場じゃないわ。


 マリアの家の使用人たちのせいで、学園をサボるのは諦めてそれぞれが選択している授業に向かう。


 いくつか授業は被っているのはあるけど、この学園の授業は取りたい授業を選択していくタイプだ。


 あたしたちが出会ったのは数ヶ月前だし、そのときにはもう今の授業をそれぞれ選択してたのよね。


 来期は一緒の授業を選択しましょうと約束したけど、今の状況を考えるとどうなるか分からなくなりそうよね。


 でも、マリアはどうか分からないけど、グラディス様たちの興味があたしとカリナから移る可能性だってあるし、期待するなっていう方が無理あるよね。


 それはいつだって気持ちもある。だけど、あたしに出来ることなんたかが知れている。


 だったら諦めて適当に相手して、嫌われるとまでもいかなくても、興味ないまでに持っていけたら何とかなるんじゃない?


 ただ、グラディス様が興味のない分野っていうのが分からない。


 身分のことでからかえば逆鱗に触れるってのは分かるんだけど。それ以外のふんわりとした理由でってのが難しい。


 だって、グラディス様は関わり合いにならなければ、他人には無関心な方だから。


 この際グラディス様が嫌だっていうのは一旦置いておいて、グラディス様が苦手なこととか探ってみようかしら。


 そしたら、あたしの平和な時間が戻ってくるかもしれないし、うん。それが無難なのかもしれない。


 だったらグラディス様が毎日来る今はいいチャンスなのかもしれない。


 グラディス様がいつものように来るのを待って反撃を開始しようと思ったのに、何故か今日に限ってやってくる気配が一切ないまま放課後になってしまった。


 もしかしてグラディス様、昨日の生焼けクッキー食べてお腹壊しちゃったとかじゃないよね?


 一言ぐらいは注意してあげるべきだった?


 でも、あの勢いならそんなことないとか言って怒って食べちゃっていたかも。


 だとしたらお見舞いに行くべき? いや、グラディス様が勝手に食べちゃったのだからあたしが何かする必要はないよね?


 グラディス様が今日も現れると思っていただけに、肩透かしを喰らった気分。


 だけど、グラディス様が来ないのだったら今がチャンスなんじゃない?


 今までグラディス様がいたせいで出来なかったお気に入りの本を読み返したり、新規のお気に入りのキャラを開拓したり出来るってことよね。


 いつもはグラディス様いつくるかってびくびくしていたけど、グラディス様のお休みが食中毒が原因なのならば、しばらくは学園には来られたいでしょうから、今の内に満喫しておかなくちゃ!


 もしかしたらカリナとマリアもお二人の相手をしなくてもよくなったかもと、期待してみたけどそんなに甘くはなくて、二人は捕まってしまったらしく会えなかった。


 だったらあたしだけでもこの幸せを享受している間にあっという間に時間は過ぎていき、気付いた時には一月が過ぎていた。


 さすがにこんなにグラディス様がいないのはあたしでもおかしいと気付く。


 グラディス様に関する噂に耳をそばたててみたけれど、みんなグラディス様が休んでいる理由までは知らないみたいでざわついている。


 でも、グラディス様がいつ戻ってこられるか分からないから不用意なことは言わないようにと気をつけているみたいだけど、こんなに来ないのだからもう少しのんびりしてもよさそうなのに。


 あたしは一人でも好きなことしてるわよ。


 あの二人?


 いつも通り忙しいみたいで、あたしにはあんまり構ってくれないわ。


 ちょっと寂しいけど、この間まであたしもあんなのだったんだなと思うと、二人のことに首を突っ込もうとは思わない。あたしは今は平和を楽しんでいるのだからね。


 それに王族のところにおいそれと下級貴族が行きにくいってのもあるし。近寄らない方が懸命だわ。


 でも、そろそろグラディス様にお見舞いに行くか、手紙ぐらい書いた方がいいんだろうけど、まだまだグラディス様のいない時間をたっぷりと楽しんでいたい。


 悩ましいところ。出来ることならこのままずっとグラディス様とは関わりたくないけど、うちの両親はグラディス様の機嫌を取った方がいいんじゃないのかって、毎日半泣きであたしのことを説得してくるからいつまでも逃げ続けられないんだよね。


 手紙なんて書きたくないけど、このままうちの両親をやきもきさせ続けるのは可哀想というか、多分このままじゃ衰弱して死んじゃうんじゃないかってぐらいやきもきしているから。


 さすがのあたしもこんなことで両親に死なれたくはないのでね。グラディス様のお宅に行くまでの勇気は持ち合わせていないから、手紙ぐらいしか書かない親不孝なあたしを許してね。


 適当に長く休んでいることの心配をしているというような内容を書いた物を送る。


 まあ、一月もあっちから連絡がなかったのだから、グラディス様は別の何かに夢中になって学園に来てないとかだってあるんだし、お父様たちが心配するほどじゃないと思う。


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