「そんなにくっつかなくても。何も彼氏役ってわけじゃないんだから」
月イチの美化委員会の集まりに出るだけだというのに、姫川は俺の腕に抱きついてきていた。
「おかげで性悪な女子たちも絡んでこないわ! 私は助かってるよ?」
「俺が助かってないんだが」
高嶺の花、【三美神】の一人を連れて歩いているのだ。俺に対する男子からの視線が痛い。
「なんだアイツ、いつの間に姫川さんと付き合ってたんだ?」
「抜け駆けしやがって! で、アイツ誰だっけ?」
「名前忘れたけどムカつくな!」
俺への陰口が止まらない。というか、俺の名前くらい調べてから悪口言えよ。まぁ、俺もクラスメイトの名前なんて覚えてないけどな。
もちろん、姫川は有名人だし美少女なので例外だ。
「掃き溜めにようこそ。貴方たちの更正に心から期待しているわ」
教室に着いてみると、なんか、美化委員長の大月先輩の様子がおかしい。先月委員長に指名されたときは真面目そうな人だったんだけどな。
「美化委員会は問題児の集うところ。一年生は知らないだろうけど、問題を起こした生徒、起こしそうな生徒は自動的にここに入れられるから」
そうなのかよ。とんでもない委員会に入れられたな。だが確かに、姫川が美化委員なのは最初から先生が決めていたような気がする。口喧嘩で問題起こしそうなことは認知されていたんだろうな。
「真面目に掃除したい人はごめんなさいねぇ? 彼、彼女らの更正に付き合ってあげてね。じゃ、ごみ拾いに行くわよ!」
委員長の号令で、俺たちは学園内のごみ拾いに駆り出された。
「そこ、仲良し同士でつるまない! 駄弁ってサボるつもりでしょ、ほら、散開!」
どうやら、友達同士で固まっているグループをバラけさせているらしい。委員長も大した力の入れようだな。
だが、俺たち二人がくっついているのは無視し、委員長は素通りしていった。どういう基準なんだ?
「掃き溜めだなんて、言い過ぎじゃない? ちょっと抗議しようかしら?」
マジか。姫川のやつ、いじめっ子だけでなく先輩にまで突っかかっていくつもりか。
「ま、まぁいいんじゃないか? 勝手に言わせておけば。俺たちだけでも真面目に活動すれば、見方も変わるって。行動で示そう!」
また虚勢を張って泣き出されても困るしな。
「柊木くん、真面目なのね」
「そうかな」
ひとまず、俺たちは無事に今日の活動を終えた。