第1話
むかしむかし、小さな村の片隅にトラという名前の猫が住んでいました。トラは灰色の毛並みが美しく、賢い瞳を持つ猫でした。しかし、どこかいつも心に寂しさを抱えていました。村の人々はトラに親切で、食べ物を分けてくれたり、暖かな日差しの下で撫でてくれたりしましたが、トラは本当の意味で「自分の居場所」を見つけていないと感じていました。
ある春の日、トラは決心しました。「もっと広い世界を見てみたい。自分の居場所がどこにあるのか探しに行こう」。そう言って、トラは村を出て、まだ見ぬ世界へと旅に出ることにしました。