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エピローグ

ダイレクトメッセージをもらってから1週間。その後、彼からの続報はなく、送ったメッセージにも反応はない。


いたずらだった可能性は大いにある。


送られてきた貼り紙の写真だって、本物なのかどうか、僕も実物を見たことがないので判別出来ない。


だが何だか妙に気になってしまい、仕事終わりに車を走らせ、送られてきた住所の場所を見に行くことにした。


そこには古いアパートがあった。


近くのパーキングに車を停め、メッセージに書かれていた部屋番号を確認してみた。時刻は23時を過ぎていたが、部屋の明かりは点いていなかった。どうやら留守のようだ。


ドアポストにはチラシや手紙が溜まっている。


流石にインターホンを押すのは憚られたので、メッセージにあった掲示板を探すことにした。夜中の住宅街。怪しまれないよう、あまりキョロキョロしないよう気を付ける。


少し歩いたところに、町内会の掲示板を見つけた。


特におかしな掲示物は貼られていなかったが、掲示板の足元に生えた雑草の陰に、先日の雨のせいかボロボロになった紙が1枚落ちていた。



そこには掠れた文字で、


『あえました ありがとう』


と書かれていた。



僕は車に戻り、彼が帰ってこないか、少し待ってみることにした。


いったい、この貼り紙は何なのだろうか。僕は考える。


そもそも、誰が『あえますよ』という貼り紙をしているのか。時期も場所もまちまちだが、文言や書き方は共通しているようだし、同じ人物によるものなのだろうか。だとしたら何のために? 


そして『あえました』という貼り紙。おそらくは『あえますよ』という貼り紙とは別のモノによって書かれたものだろう。これも文言や書き方が一致しているようだが、さすがに同じ人物(?)が書いたと考えるのは不自然ではないだろうか。同じ人物が全ての場所に関わっていたとは、僕には思えなかった。



──ふと、思いついた。



これはあくまでも僕の想像でしかないが……。


不動産屋さんの話で舞台となったのはマンションの事故物件だった。監視カメラには部屋の中を覗き込む影が映っていたが、それこそ幽霊のように消えてしまったという。


事故物件ということは被害者と加害者がいる。

被害者(の霊?)は、普通に考えれば部屋の中だろう。

となると、部屋を覗いていたのは……もしかしたら加害者──犯人なのではないだろうか。


もちろん、物好きな住人が覗いていた可能性はあるが……。



『幽霊が復讐のために犯人をおびき寄せた』と考えるのは、飛躍し過ぎだろうか。



『あえますよ』の貼り紙の主はわからないが、その貼り紙で犯人をおびき出し、被害者である霊が復讐を果たす。そして復讐を果たした霊が、お礼なのか単なる報告なのか、『あえました』の貼り紙をする……。


そういえば、不動産屋の客が言っていた場所がどうかはわからないが、キバタさんの話に出てきた場所も曰く付きの場所だった。



今回の場所も──?


もしかしたら、お母さんは────。


と、なると、メッセージの彼は────。



関わるべきではなかったのかも知れない……。

警察に言うべきだろうか?


僕は小さく舌打ちをして、スマホのロックを外した。


助手席のシートの上で、汚れた紙がカサカサと鳴っていた。

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