──と、こんなふうにね。全然バラバラの場所で、時期もバラバラなんだけど、同じような貼り紙を見たって人が複数いるらしくて。
まあ僕も偶然こんなね、興味深い話を聞いてしまったものだから。自分でもちょっと調べてみようと思って、まずはネットで検索してみたのね。
そしたら、某オカルト掲示板に、数年前に似たような話が書き込まれていたのを見つけて。けっこうスレのびてたから、もしかしたらお客さんの中にも知ってる人がいるかも知れません。
えっと、じゃあ、要約して話します。
これはね『自分が体験した怖い話』みたいなスレへの書き込みなんだけど。
書き込んでいる人は、その数年前──だから、今から10年くらい前になるのかな?──大学で犯罪心理学を学んでいた頃に死刑囚へインタビューした事があったんだって。
その死刑囚は、恋人とその家族を殺して逃げていた指名手配犯で──もしかしたらピンときたお客さんもいるかもね。僕も名前聞いたら「ああ、あの」ってなったから──まあ色々、動機とか当時の心情なんかをインタビューしたらしくて。
最後に「事件を起こしたことを後悔しているか?」って、まあありきたりなね、質問をしたんだって。そしたら「事件を起こしたことは後悔している」と。それに続けて「もうひとつ後悔していることがある」って答えたんだって。
逃げているある日、近所……その、いわゆる潜伏先のね──、近所に町内会の掲示板みたいなのがあったんだって──。
──まあ、はい、溜めて話す意味ないですね。
はい、皆さんお察しの通りです。
ある日、その前を通りがかったら、
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■■月■■日 ■■時■■分
ゆうれいにあえますよ
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って言葉と簡単な地図が書かれた貼り紙を見つけたんだって。
──ね、驚くよね。そう、全く同じ内容の貼り紙なんだよ。
それでね、地図に住所は書いてなかったんだけど、その地図がどう見ても……殺した恋人の家を示してたんだって。潜伏先とその恋人の家は、エリア的にも全然遠くて。偶然こんな場所──こんな近所に貼られてるなんてありえない、と。
だから、その死刑囚は「誰か俺のことを知ってるやつが近所にいる」と思って、慌てて町を出たらしいんだけど──。
「あの日あの時あの場所に行けば、もう一度彼女に会えたかも知れない。そう思うと……私は何故逃げてしまったのだろうと。後悔しかありません」
彼は最後にそう言って、泣いたんだって。