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ケース③ 某大学のキャンパスにて

──って言う話をね、この間、高校の同窓会で聞いて。

ううん、当時仲良かった津久田さんって子がね、会社の同僚から聞いたんだって。そう、不動産関係の。


それ聞いて「こんな偶然あるの!?」って、私驚いちゃって。

だって、私……たぶん、同じ貼り紙を見たことあったから。


えっとね、私が大学生の時だから、今から……十数年前。ある日ね、ひとりでお昼食べてたら、急に「キバタさん」って後から声をかけられて。


振り向いたら、同じ授業を受けてる子──けっこう派手目な女の子で、正直、ほぼ話したことなかったんだけど──その子がね、立ってて。「隣座っていい?」って聞くから、まあほら、断れないじゃない? だから「どうぞ」って応えたの。


そしたら座るなり「キバタさんって、幽霊とか視えるんだって?」って。大学では基本的にナイショにしてたから、びっくりしちゃって。「なんで知ってるの!?」って……。


──ああ、ごめんなさい。

話に関係ないところはいいわよね。


それでね、その子が「ちょっとついてきて」って。何だか凄く楽しそうに誘うものだから断れなくて……。ついて行ったの。


連れて行かれた先には、構内掲示板があって。

ガラス戸の中にはサークル勧誘のチラシとかが掲示されていたんだけれど、その扉の表にね……そう、スーパーのチラシかなんかが裏っ返しに、テープでベタッと雑に貼ってあって。


……まあ、もうわかるわよね。

そう、そこにね──、


────────────────────


■■月■■日 ■■時■■分

ゆうれいにあえますよ

サークル棟 ■階


────────────────────


って、言葉と、サークル棟の■階の簡単な地図が描いてあって。それで、地図のとある部屋に、こうグリグリっと乱暴に丸がつけてあって。


私はそれ見てちょっと引いちゃってたんだけど、マルヤマさん──ああ、私を引っ張ってきた子がね、その指定された場所に、指定された日時にね、行こうって言うのよ。


後から聞いたんだけど、その子、オカルト研究会に入ってたらしくて。そういうのが大好きだったみたいなのね。私は……ほら、ねえ、見慣れているし、むしろどちらかというと、そういったものは避けたいんだけど……。マルヤマさん……その、見た目がね、けっこう私の……タイプだったのよね……。あの、なんかごめんなさい……。


──それでね、あんまりキラキラした顔で「一緒に行こうよ!」なんて言うものだから、つい、イエスと答えてしまって……。


指定された日時は、掲示板を見た翌日の夕方。

私はマルヤマさんと、オカルト研究会の会員三人とで、ぞろぞろとサークル棟に行ったの。


時間はまだ夕方だったし、サークル棟にはけっこう人がいて、肝試し……とは違うかもしれないけれど、まあそんなに怖い雰囲気ってわけじゃなかったわ。


指定された場所は、オカ研の皆さんの話だといわくつきの場所らしくて。詳細は忘れちゃったんだけど、確か失恋した女生徒が自殺したとかなんとか。ベタな話だし、真偽の程はわからないんだけどね。


それで指定の時間、指定の部屋に行ったの。特に鍵とかはかかってなくて、ドアも開けっ放しだった。


──中? 何もなかった。

誰もいないし、幽霊もいなかった。


しばらく皆で待ってみたんだけど、やっぱり何もなくて。教授みたいな人──私は面識なくてわからなかったんだけど──に「勝手に空き部屋で騒ぐなよー」みたいな声かけられて、じゃあ解散しようかってなったの。その日はそれでおしまい。


そしたら次の日、ひとりでお昼食べてた私のところに、またマルヤマさんが来てね。それで「とにかく来て」って、強引に私の手を引っ張ってったの。


連れて行かれたのは、昨日の掲示板の前だった。


そこにね、新しい貼り紙がされていたの。

A4サイズくらいのくしゃくしゃの紙いっぱいに、赤黒い文字でひとこと──、




────────────────────


         しね


────────────────────




って。

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