掴んだ手に力を込めながら、俺は真っ直ぐ浩二朗を見つめると、浩二朗は諦めたように肩の力を抜き、俺の前で石畳の床に両膝をついて膝立ちになった。
そして、掴まれていた手を俺の膝に置かれているひざ掛けの上に置くと、俺の目を真っ直ぐと見上げてきた。
浩二朗の瞳は、オイルランプの微かな明かりでも宝石のように輝いて見え、まるで吸い込まれそうな気持ちに俺をさせた。
(浩二朗……)
頬に手を添え、その真剣な顔にもっと自分の顔を近づけたいと湧き上がる感情を俺は抑えながら、心の中でゆっくりと浩二朗の名前を呼んだ。
すると、浩二朗は何かを感じ取ったように静かに頷くと、俺の目を見つめたまま話し始めた。
「ねえ、椿……。僕は……椿がきっと思っているような人間じゃないよ……。だって……今もこうやって、椿を利用しているんだから……」
「利用って……。それは……お前の研究にってことか?」
俺の質問に、浩二朗は静かに頷いた。
「それは……」
(駄目だ、これ以上は……)
そう思い、口に出してはいけないと頭で分かっていながらも、俺は確かめずにはいられなかった。
「俺は……。俺はお前にとって……実験動物でしかないのか?」
「っ! そんなことないっ! 僕は一度だって椿のことをそんな風に思ったことはない! だって、椿は僕にとって……僕にとって……」
浩二朗は強く否定するように大きく首を横に振りながら声を荒げたが、すぐに力が抜けたように腕をだらりとさせ、そのまま話を続けることなく俯いてしまった。
「浩二朗……」
途切れた言葉の続きを聞きたくて、俺は自然と惹かれるように浩二朗の片頬に指先で触れた。
浩二朗は一瞬肩をビクつかせたが、今度は触れることを拒絶されることはなかった。
だが、指先に感じる浩二朗の体温は、酷く冷たいものに俺は感じられた。
そんな俺の指先に、浩二朗の手は重ねられることもなく、浩二朗は目を閉じて俯いたままで、首を静かに横に振るだけだった。
両足で膝をつき、悲痛な表情を浮かべるその様子は、まるで罪人が罪の告白をするかのように見え、俺は胸を締め付けられた。
「ごめん、浩二朗……」
「えっ……」
突然の謝罪に、浩二朗は驚いた様子で顔を上げた。
「俺、お前に酷いこと言わせた。浩二朗がそんなこと思う奴じゃないって分かっているのに、こんな試すような言い方で……最低だった」
「椿……」
浩二朗は静かに首を横に振ると、頬に触れていた俺の指先に自身の指先を重ねてきた。
その指先は、微かに震えているように俺には感じられた。
(知りたい……。もっと……だから……)
「なあ、浩二朗……。お前は俺を利用しているって言ったよな? それって、俺はお前に……お前の役に立てるってことなのか?」