呼び止められた気がした。
「冷て」
今になって俺は何を期待したのか。振り返ったタイミングで、頭に何かが落ちてきた。雨だった。
「いい加減諦めろよ」と、天からツッコミが来たんじゃないかと自嘲した。
竦めた肩を戻し、俺は周りを見渡す。
幻想的に輝くイルミネーション。定番のクリスマスソング。
そして、寄り添う恋人たち――。
当たり前の景色が、耳慣れた音が、何度も観てきたありきたりのシチュエーションが、なんでこうも毎回違った顔を見せるのだろう。なんでこうも、過剰に俺の胸を締め付けるのだろう。
「おかしいな。俺はもっと、スパッと潔く。あれ? うっ、くそ……」
想いが込み上げてきて、頬に零れた。一粒流れると、今まで隠していた感情を吐露するように、涙が止めどなく溢れていく。
「あ……」
開き始めた傘と傘が行き交う、その時に出来た隙間。その道の真ん中に、二人の姿が見えた。
とても、とても、眩しかった。
「そか……。付き合ったらキスくらいするよな。俺がしたみたいなのじゃなくて」
失恋したばかり。つい負け惜しみが出る。
だけど。悔しさと背中合わせになっているけど、それでも。すごく嘘っぽいけど。
良かったと思えた。
そう思えるのは、間違いなく二人のことだから。それと自分を
だけど今、こんな俺を支えている一番の理由は――。