「二人とも、待たせちゃってごめんね」
店のドアから現れた制服姿の成海さんは、慌てた様子でパタパタと階段を駆け下りる。
その姿を未だに可愛いと感じる俺はいけないだろうか。
「全然待ってないから」
「……うん、ゆっくり」
ぼんやりしていた。相変わらず返事をすることにも、一歩遅れた俺。
成海さんは下まで辿り着くと「ありがとう」と言って微笑んだ。
――が、早くも漂い始めた微妙な空気。
そりゃそうだ、俺がいる。それに俺から話があると聞かされている成海さんは、より気まずいだろうと思う。
「えっと、西園寺さんだっけ?」
大雅が打破。
「来た時にはすごい有り様だったんだけど、もう大丈夫なの?」
成海さんは大雅の問いに「うん……」と返事はするけど、言葉尻と表情が俺を気遣ってくれている。大雅がそれに気付くと、俺に疑問符を含ませた視線を送ってきた。
「ああ、俺は別で帰るから」
「は?」
ハテナの次は怒マーク。
それ以上は訊いてこないけど、話がちげーぞと顔で言ってくる。焦った俺は「違う違う」と、言葉を繋いだ。
「べ、別に距離取ろうとしているとか、そういうのじゃなくてだよっ。普通に。普通に友達としてそうしたいなってだけ。だって大雅、今日は色々話があるんだろ?」
大雅は目を丸くする。何か言いたげに口を開けて、でも何も言葉を発しないで不思議そうに俺を見た。
「なんだけど……少しだけ。少しだけ、俺に時間を貰えるかな?」
あのことを、ちゃんと二人に謝らないといけないから。