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第71話 お前がいてくれたから

 どちらかというと、恋愛に良いイメージを持っていなかった俺。

 普通に答えるなら、時間縛られるしとか、面倒そうとか。ガキだから興味がないって感じ?


 けど、そういうことだけじゃなくてさ。

 俺は学生で、教室の中が全て。クラスメイトだけと生きている。

 顔が良くて、性格も明るくて、友達も多い。だから十分やっていける。

 こんな話を、いじめで悩んでいる子が聞いたら嫌な気持ちになるかもしれない。きっと反感をかうだろう。

 でも、順風満帆に過ごしている俺にも、人には言えない悩みがあったんだ。


 最初は中学の頃だ。俺は同じクラスの女の子から想いを寄せられていた。

 明るくて、可愛かった子だったと思う。もちろんそれはすごく有難いことだったんだけど、俺たちの仲を取り持つっていう遊びがクラスの中で始まった。

 色々反応見られたりして、すごく盛り上がっていたのは気付いていた。だから俺は、恋愛に興味ないって公言して予防線張って。

 でもお構いなしにその子は、みんなが見守る前で俺への想いを口にしてくれた。もちろん応えられなくて。

 そうしたらさ、何断ってるのみたいな空気が流れたんだ。その子は泣くし、顔がいいからって調子に乗ってると、つい出たような男子の声が聞こえたりもした。


 なのにだ。一時の気まずさの後、また普段と変わらなく接してもらえるようになる。

 それが優しさと言えばそうかもしれない。でもきっと俺が、顔も良くて、性格も明るくて、友達も多いからだろうって思った。スクールカーストってやつ?

 当の本人でさえ、無理に笑っていてさ。なんか違うだろって、俺は応えられないくせに思ったりしていた。

 そうやって無かったことになる場合もあれば、俺に告白した思いあがりのブスとレッテルを貼られて、そのまま学校に来なくなった子もいた。


 みんな腹の内では、どう思っているんだろう。

 別に俺は偉くもないし、ただ楽しく過ごしたいだけのガキだ。

 ご機嫌取りなんかしなくても嫌いなんかならないのに、なんで俺に左右されんだよって、そんな思いがずっと渦巻いていた。


 そんな時、俺は運よく大雅とクラスメイトになったんだ。


 大雅はすげぇ。内側でうじうじしていた俺を救ってくれた。

 ルックスは親の授かりものとしてしか見ていないだろうし、顔色なんて窺わない。笑いたい時に笑って、面白くなかったら笑わない。嫌だったらあっけなく断るわ、面倒なことからはすぐに逃げるわで。あと、見え見えに格好つけたりもしていてさ。


 最初はなんだこいつって思ったけど、いつの間にかそんな大雅に沼って、いっぱい笑った。腹から声を出して笑えた。

 大袈裟かもしれないけど、心が広がっていくような。長いこと雁字搦めにされた体が解き放たれたような、自由を手に入れたそんな感覚。

 だから気付いた時には、教室の壁すら意識しなくても良くなっていた。大雅のお陰で、俺はありのままの自然体で過ごせられるようになれたんだ。


「うっし」


 俺は静かに目を開けて、顔を上げた。

 膝の上で握りしめていた手も開いて、腹にあった何かをはーっと吐いた。


 俺にとって大雅の存在は大きい。隣がすっげえ居心地いい。

 だけど俺はもう、大雅の隣にいることも叶わないし、好きな子も振り向かせられなかった……。


 欲に負けた時もあったけど、うん、大丈夫。喜んでふられよう。

 だって俺は、二人のことが一番大好きだから。

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