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第64話 後悔

 そして今ここってやつだ……。


「なんだ~? 俺があんなことさえしなければ、今頃成海さんでご飯かよ。部屋にも入れたかもしんねぇのに、本当アホか俺……」


 シャンプーも済ませて、トリートメントなんかもしちゃって、煩悩は全て洗い流したつもり。


「あ……着替え持って来てねぇや……」


 俺は仕方がなくデート服にもう一度袖を通した。でも誘発されて、電車でしたことが鮮明に甦ってきてしまった。だから俺はそれをふっ飛ばそうと、頭を左右に振ってみたけど全然無理だった。なんだか釈然としない。髪を拭くのも雑になっていた。


 廊下へ出ると俺は階段の前で股を開いてしゃがんだ。置いておいたコートを退かして、その下にある何か言いたげなリュックの頭に手を乗せてやる。


「成海さん。大雅のサッカーボール、すげぇ嬉しそうだったな……」


 俺は立ち上がってコートを腕に、リュックは胸の前で抱え、二階へと上がった。それらを自室のベッドに乗せておく。


「マフラー。母ちゃん行きは、まじで嫌だったんだけど」


 俺は押し寄せる後悔を、だあ~っと叫んで蹴散らすと、部屋着を持ってくしゃみを連発させながら一階へ駆け下りた。

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