翌日。多少のささくれはあったものの、鼻唄を歌いながら気分良く教室に入室した俺。声を掛けてくれるクラスメイトたちに挨拶をして、自分の席へ何気なく目を配ると真辺さんが現れた。
「綾瀬くんって今日休み?」
「そぉ。風邪だってさ……。何?」
「何って、別に」
真辺さんは髪をショートに切ったらしい。いじって欲しかったのかもしれないけど、俺はあまり気分が乗らず黙りを決める。
だってあれだろ? 大雅にフラれたからって切ったんだろ? 俺に何を汲み取って欲しいんだよ。わかんねぇし。
「今、失礼なこと考えてたでしょ? 綾瀬くんのことは私から見限ったの」
真辺さんは眼鏡のレンズを光らせて淡々と言った。
な、なんでバレたんだよ、怖~。
そうは思ったものの、でもまぁいいやと見切りを着けて適当にへいへいと俺は返事をしておく。いちいち相手にしなくてもいいだろうし。
「ふ~ん欠席か……。なら今日は、妃色を独り占め出来るね?」
うわ……。
真辺さんは頬に落ちた髪を耳に掛けて、じいっとこちらを注視する。なんだか俺の反応を楽しんでいるかのように感じて、ちょっと呆れてため息が出た。
俺、真辺さん苦手だ。
「あ。ほら、呼んでるよ?」
野島が真辺さんを呼んでいたから、都合よく
野島ナイスー。
内心安堵していると、真辺さんは去り際に不適な笑みを浮かべて「男の人は失恋したらどうするのかな」と吐き捨てていった。
どういう意味だよ、もー。いちいち声に出さなくていいのに腹いせとかか?
だあ~もうブスになるわ。これ以上は考えるのをやめよう。
そうして苛立ちを振り払うように頭を横に振っていると、背中に声が掛かった。
「おはよう麻生くん」