ドアが開けっぱなしだなと思った。
電気は点いていても、天気が悪いから廊下が暗い。保健室の明かりが、ひと際目立つ。
まるでダンジョンを抜けた先にある、最高のエンディングを迎えるようだとか、馬鹿みたいなことを考えた。
「なんだ?」
叫び声を聞いた。なんとなく大雅っぽい。
妙な胸騒ぎを覚えるけど、これはきっと吊り橋効果の類。会いたい気持ちと、ごちゃ混ぜになっているだけだろう。それにもう目と鼻の先。今に着く。
そうやって後ろ向きな妄想は捨て、俺は片側に重なる保健室のドアに手を伸ばした。
「お昼、食べそこなっちゃ……」
聞こえたその声に、俺は全身で反応する。だけど正面には成海さんの、二人の姿はない。
俺はドアを後ろへと押し出して、床を蹴った。体が前方に飛び出る中、俺は予め用意していたあの台詞を、一度頭に流してチュートリアルをする。
本当は成海さんの名前を呼んでみたい。でも今はぐっと我慢して、代わりに大雅をフライングして呼んだ。上手い具合に、適当に、俺は笑顔を作って。
先に視線を持っていき、後から体を向けていくと――
あれ?
様子が変だと思った。少し離れた場所に、一脚の丸椅子が倒れていて、その先には大雅がいる。だけど、その大雅の後ろ姿に違和感を感じた。
「弁当持ってき……た……って」
えっと、待てよ。成海さんは……いた。
でも、なんで。
「嘘……だろ……」
なんでキスしてるんだよ……。