『このレイ様と写真を撮りたいお友達は、五百円を持って並ぼう』
カーター葵がせびり出すと、途端に客は減る。仕方がない。五百円も払うならアトラクションに使った方がいい。
そもそもレイの姿は、既にスマホやらタブレットやらで撮られているしな。
でも俺的にこれは凄いことだと思う。なんたってバイトを始めたばかりの頃は、撮られることすらなかったんだぜ?
成海さんのお陰で、俺はここまで来れたんだ。
「お兄ちゃん、ほらこっち見て。僕と写真、撮ろ~」
ああ、そういやぁこの子みたいに、携帯ゲーム機なんかで撮ってる子もいたわ。
「もう、勇介。お兄ちゃんじゃなくて、レイくんでしょ?」
成海さん⁉
来てくれているのは、もちろん知っていたけどっ、ええっ⁉
「あと、touchで撮っちゃいけないんだぞ~?」
「えーっ、なんでタッチで撮っちゃいけないの~? お姉ーちゃん」
お姉ちゃん……――弟か!
成海さんの隣には、小学生くらいの元気な男の子が。確かにたれ目なところとか、似ているかもしれない。
「お兄ちゃん大丈夫? なんかオロオロしてるよ? 不審者みたいだねっ」
「こ、こらぁぁ」
成海さんは謝りながら、俺と勇介くんを交互に見て、あわわしている。
か、可愛いなぁ……。ちなみに訂正しておくが、俺は不審者では――
「でもお姉ちゃんは、そういうところが好きなんだもんねっ」
「へ?」
「ゆっ、勇介っ」
成海さんの顔が一気に赤くなる。
「今お兄ちゃん喋った!」
勇介くんは「キセキ~」と叫びながら、両腕を飛行機のように広げて走り去ってしまった。
「あっ! ゆ、勇介~」
成海さんは俺にベコっと素早く頭を下げ、すぐにピューンっと離れていく。勇介くんを追っていく……。
「い、今の反応。俺、期待していいの……?」