目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第12話 きたこれ

『このレイ様と写真を撮りたいお友達は、五百円を持って並ぼう』


 カーター葵がせびり出すと、途端に客は減る。仕方がない。五百円も払うならアトラクションに使った方がいい。


 そもそもレイの姿は、既にスマホやらタブレットやらで撮られているしな。

 でも俺的にこれは凄いことだと思う。なんたってバイトを始めたばかりの頃は、撮られることすらなかったんだぜ?

 成海さんのお陰で、俺はここまで来れたんだ。


「お兄ちゃん、ほらこっち見て。僕と写真、撮ろ~」


 ああ、そういやぁこの子みたいに、携帯ゲーム機なんかで撮ってる子もいたわ。


「もう、勇介。お兄ちゃんじゃなくて、レイくんでしょ?」


 成海さん⁉

 来てくれているのは、もちろん知っていたけどっ、ええっ⁉


「あと、touchで撮っちゃいけないんだぞ~?」

「えーっ、なんでタッチで撮っちゃいけないの~? お姉ーちゃん」


 お姉ちゃん……――弟か!


 成海さんの隣には、小学生くらいの元気な男の子が。確かにたれ目なところとか、似ているかもしれない。


「お兄ちゃん大丈夫? なんかオロオロしてるよ? 不審者みたいだねっ」

「こ、こらぁぁ」


 成海さんは謝りながら、俺と勇介くんを交互に見て、あわわしている。


 か、可愛いなぁ……。ちなみに訂正しておくが、俺は不審者では――


「でもお姉ちゃんは、そういうところが好きなんだもんねっ」

「へ?」

「ゆっ、勇介っ」


 成海さんの顔が一気に赤くなる。


「今お兄ちゃん喋った!」


 勇介くんは「キセキ~」と叫びながら、両腕を飛行機のように広げて走り去ってしまった。


「あっ! ゆ、勇介~」


 成海さんは俺にベコっと素早く頭を下げ、すぐにピューンっと離れていく。勇介くんを追っていく……。


「い、今の反応。俺、期待していいの……?」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?