数日後、桃瀬経由で太郎の情報が送られてきた。
『名字で地元の名士だってわかるから、あえて伏せていたんだろうな。とにかく入院している病院もわかったことだし、なんとか時間を作って、見舞いに行ってやれ』
メッセージと一緒に添付されてる太郎の顔写真を、ドキドキしながら、まじまじと見つめてしまう。どうやって手に入れたのか、それは大学構内で撮影された写真で、大勢の学生の中にいる太郎をクローズアップしたものだったが、ハッキリと本人だとわかった。
出逢ったときよりも、少しだけ髪が短いけど、やっぱりボサボサ気味で、どこか眠そうな表情を、ぼんやりと浮かべている顔。写真だけど数日ぶりの再会に、胸がじーんと熱くなってしまう。
「周防先生、次の患者さん入れますけど、大丈夫ですか?」
その声にハッとして、慌ててスマホを白衣のポケットに隠した。
「ヤバイ……今の俺、乙女な顔になってる気がする」
まるで念願のアイドルに会った、オタクな青年みたいかもしれないな。
勢いよく両頬をパシパシ叩いて、気合いを入れ直す。
「ごめんねー! もう大丈夫だよ。患者さん、診察室に入れちゃって~!」
さっさと患者さんを捌いて、太郎に逢いに行こう。その意気込みで仕事に勤しんだのだった。