「らしくないぞ周防。おまえもっと、ガッツのあるヤツだったろ」
「しょうがないでしょ。恋は誰だって、臆病になるものだよ」
苦笑いして言うと、桃瀬が振りかぶって俺の背中を叩いた。
「いたっ!」
「なんのための親友なんだよ俺は! おまえが病気の俺を助けてくれたように、俺だっておまえを助けたいんだ!」
「桃瀬……」
そんな俺たちのやり取りを、ふわりとほほ笑みながら見てる涼一くんの視線が、何気に照れくさく感じる。
「あのね、太郎くんのこと、わかる範囲でいいから、詳しく教えてほしいです」
言いながらスマホを取り出し、メモの準備をする姿に、俺は眉根を寄せた。
「もしかして、捜してくれようとしてる? だけど本当に、アイツの情報がないんだ」
手がかりになりそうなものなんて考えても、ほとんど無いに等しい。
「この若さで死にそうな病気って、すごく手がかりになりそうな気がするんですけど、教えてもらっちゃダメでしょうか?」
――確かにそうだ。甲状腺癌はあまり男性がかかることのない病気だし、手がかりになるといったら、そうなのだけれど。
「まあ……俺から教えてあげてもいいけど。それを知ったところで、個人情報になるからね。簡単に、他所の病院が教えるワケ、ないと思うよ」
「とある人に頼んで、調べてもらったら、きっと全部調べつくして教えてくれると思うんです」
にっこり笑って、涼一くんは桃瀬の袖をグイグイ引っ張ると、うへぇとあからさまに顔を歪めて、すっごくイヤそうな表情を浮かべた。
「あー、アイツに頼むのか。それは間違いなく、捜し当てるだろうな」
「僕らの知り合いに、捜すのが上手な人がいるんです。だから教えてください」
「でも……」
やはり言い淀んでしまう。
「郁也さんも僕も周防さんの恋を、手遅れなんかにしたくないって思っているんです」
涼一くんの言葉に、桃瀬はそうだと言いながら、首を縦に振って同意する。
「それじゃあ臆病な周防に、追いかける理由を俺からつけてやるよ」
「なにそれ?」
「太郎は、おまえの患者だったんだ。その後、病気がどうなったのか。医者として知りたくないか?」
「確かに、気になるけど」
「それなら確認するために、太郎を追いかけたことにすればいい。あとはお互い想い合っていれば、なるようになるんだよな?」
なぜか俺に言わず、涼一くんに向かって言うと、それに答えるように、彼は桃瀬に体当たりして、そうだねと嬉しそうに答える。
「そういうことだ。太郎の居場所がわかったら、どうなっているのか、ちゃんと確認しに行けよな」
「僕らも太郎くんのことが心配ですから、病気のこと教えてください」
ふたりの思いやりに胸を打たれて、今まであったことと病気のことを、思いきって打ち明ける。