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恋わずらいの小児科医、ハレンチな駄犬に執着される
相沢蒼依
BL現代BL
2024年11月10日
公開日
84,001文字
連載中
親友に実らない片想い中の俺の前に現れた年下の大学生――運命の人は誰なんだろうか。

アレルギー専門の小児科医院を経営している周防武。
秘かに想いを寄せる親友が、以前恋していた相手と再会する衝撃的な場面に立ち合い、心の傷をさらに深く負ったところに、「自分は重病人だ」と言い張る、名前を名乗らないひとりの大学生と出逢い、ひょんなことから面倒を見ることになってしまった。

以前執筆した作品を改題し、リメイクしております。

Love too late:壊したくない距離感

 運命の人は、この世にふたりいるらしい。ひとりめで人を愛することと失うつらさを知ったのちに、ふたりめで永遠の愛を知るという。


 だがそんなのは嘘っぱちだ。だって俺の場合、後にも先にも進まないのだから。


 実らない恋愛だとわかっているのに、どうして諦めきれないのだろう。手を伸ばせば届きそうなのに、寸前のところで相手と俺の未来に不安を覚えた瞬間、思いっきり躊躇して固まったように動けなくなってしまう。


 だから彼は、俺の手の届かない遠くへ行ってしまった。




 俺が経営する病院に急患を持ち込んだ、同級生の桃瀬とその患者が、仲良く並んで挨拶してくれた。


「周防悪かったな。おまえの病院は小児科なのに、大人の急患を持ち込んで」

「本当にありがとうございました。死にそうなくらい具合が悪かったのに、一気に治せちゃうなんて、すごいです!」


 目と目を合わせてほほ笑み合いながら俺に告げる、ふたりの仲のよさで、なるようになったと安堵した。


 俺は彼らにつられるように瞳を細め、ニッコリと笑い返してやる。まさか何十年前の恋が叶った瞬間に、自分が立ち合うことになろうとは、夢にも思わなかった。


(あ、でもなんとなくだけど、当たり前のような奇跡にも感じる。桃瀬が心の奥底で、無意識にずっと彼を想っていて、彼に似たような相手ばかりを恋人にしていた、そんな気がする)


 だから俺がどんなに想っても、アイツの好みじゃないせいで親友どまり。どんなに好きになっても、けしてこの想いは届かない。


 病院を去っていくふたりの後ろ姿に、そっと手を伸ばす。もう何度目だろうか。溢れ出しそうな気持ちをぐっと噛み殺して、桃瀬が他の誰かと歩いていく姿を、こうやって眺めるのは。


 燃えるような夕焼けの中、影が長く伸びる。あっちは仲良くふたり分の影が伸びて重なり、俺の背中には寂しくひとり分の影。それがまるで、未来の自分の姿であるように思えてならなかった。

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