柚花は千歌に着物の着付けを手伝ってあげて、千歌はなんとか無事に着物を着れた。
しかし柚花は千歌の着物をジッーと見ていた。
「ゆ、柚ちゃんジッと私を見ているけど・・・な、なにかな?」
柚花の視線から嫌な気配を感じて千歌は少しビクビクする。
「いや、何と言うか・・・。千歌ちゃんの着物・・・。いや、やっぱ何でもない!」
これ言ったら千歌は恐らく傷つくだろう。安っぽい着物なんて言ったら絶対に傷つくに決まっている。
柚花は忍者の集まりに着ているめっちゃ高価な着物を部活でも使っているが、それと比べたら千歌の着物は安物である。
だから・・・コレは絶対に言ってはならない。言っても千歌は怒りはしない・・・がかなり傷つく。笑顔でも心がエグられるほど傷つく。
「なんだったんだろう?」
言うのを止めた柚花に対して千歌は「何かあったのかな?」と思ったが、賢い柚花の事だから大丈夫だろうと自己完結した。
「さあ一緒に字を書いていこう!取り敢えずどんな文字書いていく?」
気を取り直して柚花と千歌は机に座って紙や墨、筆を用意して書道の練習を始める。
始めるのだが、柚花としてはどの様な字を書くのか取り敢えずテーマを上げてみたい。
「千歌ちゃん!千歌ちゃんはどんな字を書きたい?カッコいい文字とか季節を感じる字とか色々あるよね?」
「えっ?えっ?」
しかしそんな事を言われても基本的に受け身な千歌はどう答えたら良いのか困る。
「わ、私は何でも良いけど・・・。」
千歌には書きたい字とかそういうのは無い。だからお題とかテーマを決めろとか言われても決めることが出来ないのだ。
だから柚花が決めた。昔からの古き友である千歌の為にお題を出した。
「じゃあ今回のお題は荒々しさ。荒々しくも格好の付く字を書いてみようか?」
楽しそうに笑顔を見せる柚花とは反対に千歌は「どうしよう・・・」と困った顔である。