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第8話 君が欲しい〜後編〜

やばい、やばい。好きな奴に、触られるって。

手のひらの温もりがダイレクトに伝わってくる。


お互いの熱を昂めあい、

どんどん動きが大胆になっていく。

なぁ、優斗、本当に

俺のものになってくれるの?

俺と、付き合って、ずっと、一緒に、いてくれるんだよね?

ねぇ、もう、離せないよ、きっと。

この一線を超えたら、引き返すことなんて、できないよ?


……ははっ、やばいな、俺。相当重たいやつだ。



「あっ、あっっ、だめっ、あっ、やっ、あぁっ、だめだめっ、や、いきそ、いっちゃう、まってまって、やだ、 あっあぁぁぁぁっっ!!!!」

一際甘く高い声が、脳みそをどんどん麻痺させていく。

もっと、もっと、もっと……俺が、俺だけが優斗を泣かせたい。もっと泣いていいよ。

びくびくっと震えたあと、ぐっと全身がこわばる優斗。

切なく寄せた眉が、また色っぽい。


たまんない。たまんない。

もう、全部全部俺のものだ。


「っあ、っは、はぁっ、はぁ……っ……」

荒い息を吐きながら、くたっ……っと力が抜けた優斗がとろりとした目で俺の手をぼおっと眺めている。


「ご、ごめん、っはぁ、かかった……っはぁ、はぁっ、」

「大丈夫だよ?……んっ、うん、……すごく、甘いな」


ペロリと自分の指を舐めながらそう言うと、優斗はこれ以上ないほど全身を赤く染めた。

あぁ、綺麗だ。

「と、透っ!な、なに、してん、だよっ!!!」

顔を背けてしまった優斗の頬に、ちゅっと口付ける。


「ん?美味しかったよ。優斗、ありがとうね。

 ……ねぇ、お願い、俺も、もう限界。……いい?」


ヤバい……優斗を汚したい。俺だけが、優斗の綺麗な所を、どんどん俺色に染めていって、しまいたい。

信じられないような感情が次から次へと湧き上がってくる。

こんな考えが優斗にダダ漏れだったら、きっとドン引きされてしまうんだろうな……。



「なぁ、とお、るの……あつい、や、だ、は、恥ずかしい……」


そんな事を言われ、息が止まりかける。

息ってどんな風にしてたっけ……

はふはふ、とうまく出来ない呼吸の中

頭がどんどん真っ白になってくる。

夢か、これは。


「っあっ、っく……!ゆうとっ……!!!」

凄い勢いで溢れ出す熱がなかなか、止まらない。

ヤバい、なんだこれ。

今までで1番気持ちが良い。

「とお、る……」

優斗に甘い声で名前を呼ばれ

あまりの快感でキツく閉じていた目をそっと開ける。

そこには、

困ったような、恥ずかしそうな表情の優斗がいた。

「はぁ、はっ、ご、ごめんね、こんな、いっぱい……。優斗が、可愛過ぎた。……いま、ティッシュ、とるからっ、はぁ、待ってね……、っはぁ」



ベットのヘッドボードからティッシュを取ろうした時に信じられない光景をみた。


「うへ、にがぁ、なんだこれ」

もう、思考は一旦すべて停止した。


「ゆ、優斗っ、や、やめっ、何してるの!?」

がしがしっと何枚も取り出したティッシュで、優斗の口から抜き取った手を丁寧に拭っていく。

「は?だって透だって、してただろ?……俺の……」



可愛く首をかしげて、なんてエロいことをいってくるんだ、この子は。

「俺は!いいんだよ、優斗は……だめ、こんなの。」


「なんだよ、それ、……俺だって……お前のこと、す、好きなんだ、から……な」


なんてこった。

今日俺は何回理性をぶっ飛ばされるんだろう。


はぁっ、ダメだ、我慢できない!


どさっと再びベッドへ可愛い男を沈める。

初めての時は慣らすまでが肝心と書いてあった。最後までは無理だとしても、そこを、見たい、どんな感触なのか、知りたい!

「やだっ、や、何!?なんだよ、この、格好!」


全てが見える姿勢にしてしまった。

優斗の、全てが、見える。



大丈夫なのか……本当に……ここに?

でも

早く、ここに、俺のを……。


さっきから矛盾ばかりだ。


「お、おい、透っ、なぁ!きたねーぞ、やめろって、なぁ、」

「汚くなんか、ない。綺麗だ。綺麗すぎて、俺、やばいよ。どうしよう、優斗」

これが漫画なら鼻血がだらだらと出ているんだろう。

血が沸騰しているかのようにくらくらする。

まず、酸素が足りない。


はぁ、はぁ、はぁっ、

まるで飢えた獣みたいな呼吸になってしまって、恥ずかしい。

だけど、それほど、俺は、優斗が全部、欲しい。


不思議そうな顔をする優斗に優しくキスをしながら

枕の下に隠していたボトルを取り出す。


「なに?それ」

「ん?さっき、ドラッグストアで買ったんだ。

優斗に痛い思い、させたくないから、さ。男同士では、必需品なんだって」


ん?とまだ不思議そうな顔をしている優斗の瞼や頬、鼻先にちゅっちゅっっ、とキスを落とす。


パチン!

蓋を開けた瞬間

まるで催眠術が解けたかのように

一気に脳内がクリアになった。


「あっ…そうだ……!!!」

「どした、透?」

大事な事を、思い出してしまった。


「優斗…今日、もしかして、バイト?」

「あ、うん!17時から!だからここ16時には出ないとだなぁー!」


部屋のドアの上にかけられた時計を振り返る。


今は……14時…か。

だめだ、だめだめ

バイト休んじゃえ、なんて、言えない。言ったら絶対ダメだ。

バイト休ませてまで、無理矢理焦って、最後まですることないんだ。

また、また、次の機会、絶対ある。いや、作る!!!


バチっと蓋を閉めて、ヘッドボードの引き出しにしまった。


今、優斗を見たら、理性なんていとも簡単に切れてしまいそうで、ごろんと優斗の脇に寝転がり、何度も深呼吸を繰り返した。


平常心平常心、落ち着けよ、俺。

今日はもうエロいことは、封印だ。

……よしっ!!



気合いを入れて身体を起こし、ローテーブルに置いてあるウエットティッシュで「平常心平常心……」とぶつぶつ唱えながら、優斗の身体を拭いていく。


ベッド下に落ちてしまっていた下着を目をほとんどつぶったままそっと履かせた。

目の毒はしまっておかないと、


俺のアホな理性は、またいつ決壊するかわからないから……。


自分の衣服を整え、ぬるくなったサイダーをコップに注ぐ。

それをちょこんとベッドに座る優斗に渡した。


「…っなぁ、優斗?土曜日、泊まりに来ない?」

「ん?待って、スマホ、スマホ。

うん、土曜日は朝から夕方までのシフトだから、バイト終わってからなら!やった!お泊まり会か!?」


お泊まり会…そんな可愛いもんじゃない。

俺はその日こそ、優斗のことぐちゃぐちゃにして、抱きたいと思ってるんだよ?

「あ、あの、日曜日のシフトは?ほ、ほら土曜日泊まって、そのままデートなんて、いけたらな。と、思って」


嘘だ。俺は最低。

男同士のセックスは受け入れる側に相当な負担がかかるらしい。翌日は起きるのもしんどいとも聞いた。そりゃそうだ。

きっと次の日は優斗、ぐったりしてしまっているだろう。

だからお願いだ、バイト休みであってくれ!!!


「うん!ちょうど連勤続いてたから日曜休みになってる!!!よっしゃ、デートってどこいくんだ?

ディ◯ニーランドかぁ?水族館か!?」


よっしゃ!!!はこっちのセリフだ。

神様ありがとうございます。

土曜日、土曜日こそ、優斗を最後まで抱かせて下さい。

今日はきちんと我慢しますから!


「うん、どこいこうか?

…でも、さ、優斗。俺、土曜日は、

エッチなこと、最後まで、していい?もし、お泊まりくるなら、優斗も覚悟決めて来て欲しいんだ。多分、俺止まれないはずだからさ。」


「か、覚悟?…最後までって。え?今ので最後までじゃないってこと?え?」

優斗の瞳が不安そうに揺れる。


「うん。優斗のここ。使わせて欲しい。」

下着越しに大切なそこをなでる。


え!?

っと困ったような、少し怯えたような表情をさせてしまった。

そんな顔をさせたのは俺のくせに、

可哀想になってぎゅっと抱きしめる。


「だから、その、今日火曜日だから……あと4日。……土曜日までに、覚悟決めて、欲しいんだ。で、でも!もし、優斗が、嫌なら、待つ。いつまでも、待つ!心の準備できるまで、無理矢理なんて、しない。約束するから。」


「う、うん?」

きょとんとした顔が可愛すぎて

再び唇を合わせる。

優斗、キス好きなんだな。きっと。

すごい蕩けた顔になる。



……っと待て待て待てーーーー!!!


これ以上は、ダメだ!!

ダメ、ダメっ!


再び熱が再燃してしまわないように

そっと唇を離し、優斗の衣服を整えた。


バイトに向かうギリギリまで2人で、ベッドでくっつきながらゴロゴロしていた。

他愛もない、話をしながら

時々おでこや、頬、そして唇を重ね合わせる。


幸せすぎる、

なんだこの時間は。腕の中にずっと優斗がいる。

しかも、俺の話を聞いて、優しく笑ってくれている。

幸せの形が全部詰め込まれたみたいな空間だ。


あぁ

このまま、離したくない。





そんな気持ちに、なんとかけじめをつけて


もっと一緒にいよう

バイト休んじゃえよ。


と何度も出かかった言葉を必死に飲み込んだ。






16時過ぎに、駅まで一緒に行った。

優斗は「女じゃねーんだから!送らなくていい!!」

とぷりぷりしていたが

「お願い!もう少し、一緒にいさせて欲しい」……と懇願すると

「……わかっ、たよ」と頬を赤らめた優斗からお許しがでた。



「なぁ、やっぱりいつも帰り、めっちゃ遠回りして俺のこと送ってたんじゃん!透ん家、駅と大学の中間くらいだったなんて、知らなかったけど!」

駅の改札の前で、離れたがらない俺の身体をぐいっと押しながら、ツンっとした表情で怒られる。


「ははっ、それだけ優斗と少しでも一緒にいたかったってことだよ。わかってくれた?」


ふわっと紅くなる目元、思わずキスしたくなったが。改札前で人が常に行き交っている。……さすがに無理だ。


「バイト終わったら、連絡して。一言でいいから!」

「ははっ!ちゃんと連絡するよ。22時までだからな?寝ないで待っとけよ?」


バイバイ!と改札を入ってもいつまでも手を振ってくれる優斗がたまらなく愛おしい。



ホームの階段を降りていった優斗。見えなくなる最後の最後まで見送る。


ふと、自分の足が小刻みに震えていることに気がついた。


やばい。

今頃になって

すんげー実感してきた。


俺、優斗と、付き合えるんだ。

しかも、勢いとはいえ、優斗とあんなことまでしてしまった。

付き合った初日にあんな事して

引かれてないか?大丈夫か?

しかも土曜日に最後まで抱く宣言までして。


震えている太ももを手のひらで擦る。

全く余裕がないのがバレバレだ。

でも

でもね、優斗、

それほど、ずっと、


優斗……きみが欲しかったんだ。

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