「なぁ、もっかい、キスしたい」
「ちょ、ちょっとまって、いや、これ以上は
大学だし…あの、場所変えてなら…あ……えっと、
俺ん家、き、来ます…か?」
心臓が爆発しそうにバクバク言っている。
妄想で抱き続けてきた彼を、邪な気持ちで家に誘う日がこようとは。
抱きしめていた優斗が
ばっ!と顔を上げる。
「え!?透ん家!?行きたい!行ってみたい!!」
目がキラキラしていて
これから、この優斗をぐずぐずに溶かすのかと思うと
頭がくらくらする。とんでもなくイケナイ事をしている気持ちになる。
お昼後の3コマ目の講義は
2人ともサボり、俺の家へと向かった。
「あ、こっちに、曲がるんだけど、ちょっと駅前の…ドラッグストア…行ってもいいかな。」
優斗を抱ける日が来るなんて思ってもいなかったから、
家に何の準備もない。
「OK!じゃあ、俺、隣のコンビニ行くな。
透ん家行くんだから、おやつ買っていかないと!!
ポテチ何味派?」
あ、あれ?
「あ、ピザのやつ。」
「わかる!!あれ美味いよなーー!
飲み物は炭酸?あ、お茶か?」
「えっと、何でも飲めるから、優斗の飲みたい物でいいよ。」
じゃー、サイダーにしよーっと!とどことなくウキウキした様子の優斗。
あれ、も、もしかして、優斗は、全然そんなつもりは無い?
い、いや、“キスしたい”と言ってくれたのは優斗だ。
だから、部屋に着いたら、出来ることなら、…優斗が平気そうなら、その、『最後』まで、したい。
いや!優斗がその気じゃなかったとしても、
なんとしてもそういうムードに持っていってみせる!!
優斗をこの手で……ぐずぐずに溶かしてみたい。
一体どんな甘い声なんだろうか。
それを想像するだけで、素直なそこがぐっと形を変えそうになる。
色とりどりのゴムの箱が立ち並ぶコーナーの前で、これを使う瞬間を思い顔が勝手にゆるむ。
おい、ここは店の中だぞ!
必死で化学式を思い出し、熱がこれ以上集まってこないようにする。
「おじゃましまーす!おぉ!綺麗にしてるなー!」
8畳のワンルーム、ベッドと、白いローテーブルくらいしか置いていない。
自分が散々優斗を思って、1人で発散しまくっていた部屋に、本物がいる事に、頭が爆発しそうになる。
ぱふっ!とベッドに優斗が座る。
よし、そのままそこにいて。そのまま、押し倒したい。
コンビニの袋をガサガサする優斗。
おやつ、食べてからにするか…楽しそうにテーブルに出してるし…
早まるな、絶対にタイミングはくる…。
キッチンでコップを出すふりをしながら
さっきドラッグストアで購入した紙袋をこっそりリュックから取り出す。
どうしよ。どのタイミングでベッドにこれ隠そう。
すぐに取り出せるように、いざという時に、カッコ悪いことにならないように…音を立てないように
フィルムを剥がす。
よし、あとはトイレ行ったすきにでも
ベッドに隠そう。
再びリュックの1番上に紙袋は片付け、
コップを優斗に渡す。
「あ、そうだ、手洗いたい。洗面所どこだ?」
「玄関のとこの左の扉だよ」
よし!!!チャンス!!!
優斗が借りるなーと扉の向こうに消えたのを確認して
今後のことも期待して、5個入りと悩んで、結局選んだ12個入りのゴムの箱と、ローションを枕の下に急いで隠す。
よし、よし、OK。
ふぅー、ふぅー……。勝手に上がる心拍数を必死で落ち着ける。
ローテーブルにはピザ味のポテチと、チョコやクッキー、どんっと1.5リットルのサイダーが乗っている。
優斗が選んで買ったのだと思うと、そのおやつ達でさえ、とてつもなく可愛く見える。
優斗に関してのこと全てにおいて、俺はだいぶ頭がいかれている。
あぁ、結局優斗は床に座ってしまった。
ベッドを背もたれにして、横並びで座りながら
大学の話や、サッカーの話をぽつぽつと話したりして
おやつを口に運んでいく。
2人ともお昼を食べ損ねていたので、一気にお菓子の袋は空になった。
すると、優斗がちらっとこちらを見た後、また目線を外した。
「なぁ、あのさ、俺と透って、そ、その、付き合うのか?」
「え?俺はその気まんまんだよ。毎日沢山連絡したい、一緒にいたい、優斗のプライベートも、全部知りたい、 ……その、エッチなことも…したい、んだけど、優斗は、どう思ってる?」
ぼっと優斗の顔が真っ赤になる。
「あっ、そのっ、俺、いままで、付き合うとか、その、その、えっ、えっちな事とか、したこと、なくて、
どうしたら、いいのかなっ、て」
あーーーーーー、ダメだ。可愛すぎるだろ。
もう、ダメ!
気がついたら優斗を抱きしめて、唇を重ねていた。
唇の角度を変えながら、何度も何度もピンクに色づく唇を啄んでいく。
開けて。というように舌先でつつくと
そっと唇を開いて舌を受け入れてくれた。
あったかい、気持ちいい。舌を追いかけて絡ませる。
溢れてくる唾液をじゅっと吸い取る。
優斗の唾液すら、愛おしい。
ぎゅっと俺の服を掴みながら、必死に舌を出そうとしてくれている。
「んっ、ふ、んん、むっっ、ん、」
鼻から抜けるような優斗の甘い声が自身の暴走しそうな熱をダイレクトに直撃する。
これはやばい、窮屈なそこで、早く出して欲しいというように、痛いくらいにジンジンと熱をもっている。
たっぷりと口の中を舐めまわし、舌が痺れるほど絡ませあった後、そっと唇を離す。
唾液が舌先で繋がりあっていて、とてつもなくエロい光景だった。
はぁ、はぁっ、と荒い息をしながら
とろんとした目で俺を見つめる優斗。
大丈夫?……大丈夫、だよな?
ふわふわと力の入っていない優斗の身体をベッドへと引きずり上げる。
どさっと仰向けに寝かせると、逃げられないように上から乗り上げた。
よかった、逃げる気は無いみたい。
ふわんとした表情で力を抜いて、俺を見ている。
再び唇を合わせ、
優斗のポロシャツのボタンを外し、邪魔な上着をベッド下へ放った。
妄想していたよりも断然、滑らかで陶器のような肌だ。
そこに彩りをつけるかのような、淡いピンクの飾り。
たまらないたまらない。
無我夢中でそこに食らいついた。
「や、なにっ!そんなとこ!やめっ!ふはっ、くすぐったいっ!あははっ、やめろって!」
「…くすぐったい?」
そっか、初めてならそうなるのか。始めから気持ち良いわけじゃないんだ?徐々に感じるようになるのかな?
優斗もいつかそうなってくれるだろうか?
くすぐったくて、身体を必死によじる優斗。
それでもその感触が心地よくて、そこから離れられなくなる。
「ふふふっ、はっはっ!も、もう、やめろって!」
必死に気持ちの良いところを探ってみるが
当の本人はくすぐられていると思っているのかケラケラ笑い続けている。
くすぐったい……だけ?
俺が、下手?……い、いや、だ、大丈夫だよ、な?
焦る気持ちを懸命に抑えつつ、そっと優斗のズボンに手を伸ばす
早く見たいような、まだ大事にとっておきたいような、矛盾した気持ちが脳内に渦巻く。
結局、見たい欲望が勝ってしまった。
優斗は、今までエッチをしたことが無いと言っていた。
こうやってここを優斗以外に触れるのは、俺が初めてだ。俺だけが……知っている……
はぁ、はぁ、はぁ。血が煮えそうなくらいに身体中を熱く巡っているのがわかる。
無意識に息がかかるほどの至近距離で
優斗のそこをじっくりと眺めてしまっていた。
「やだ、見るな、そんなとこっ」
両手で恥ずかしそうに隠そうとするのを、パシッと捕まえて、お腹の上でひとまとめにする。
……やば。まるで手を縛っているみたいな格好になってしまった。……ごくっ……!
自分の喉がすごい音をたてた。
俺……そんなプレイ、興味あったのか?
……いや、優斗が、優斗が可愛すぎるせいだ。
「んんっ、はぁっ、あっ、やっ、やだっ、んんぁっ、」
優斗の手を捕まえていない方の手で、好き勝手に優斗を堪能する。
俺の手の動きに合わせて、びく、びくっと優斗が震えている。
断続的な快感から逃れようとするかのように、のけぞる喉のラインがあまりに綺麗だ。
やばい……好きな奴のそんな光景を目の前で見ていて、興奮しないわけがない。
興奮のあまりに、手が震えてくる。
息が、上がる。
額に汗がじわりと滲んでくるのがわかった。
あまりにきつくなってしまった自分のズボンを急いで寛げる。
ふぅ、
再び、優斗の身体に触れようとすると、
突然優斗が叫んだ。
「!!!なっ!なんだこれ!!俺のと、全然違う!」
なにそれ、可愛いこと、言わないでよ。
身体を起こし驚いている優斗の手を掴み、自分の熱へと導く。
えっ!?といった表情で俺を見る瞳が、潤んでいた。
「ね、触って、優斗……。」
冷静になったら、きっと自分をぶっ飛ばしたくなるくらいヤバいことを言っている。
頭の奥の奥ではわかっていた。
だけど、止まらない、止められない。