―――汚ねえな馬鹿野郎。
頬に冷たい、ぬるりとした感触があった。おまけに水道管にへばりつく淀みのような生温い臭いがする。
暗くてさっぱり辺りは見えないが、色はたやすく想像できた。濁った緑と茶色、それに黄土色。もしかしたら、不似合いに綺麗な藤色なんかも混じってる。たぶんそんなところだろう。
―――だったらさ。
彼はくくく、と笑い声を立てる。
―――きっと俺の髪なんか、その中でひどく目立っているだろうさ。
自分の真っ赤な真っ赤な髪は。
彼は思わず笑いが止まらなくなりそうな自分を感じていた。
だがその笑いは結局長くは続かなかった。後回しにすることにしたらしい。
ぬるつく床。両手をついたら、甲の辺りにまで何やら水っぽい感触がある。
コルネル中佐は重い身体をゆっくりと引き起こした。