目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
プロローグ

 ―――汚ねえな馬鹿野郎。


 頬に冷たい、ぬるりとした感触があった。おまけに水道管にへばりつく淀みのような生温い臭いがする。

 暗くてさっぱり辺りは見えないが、色はたやすく想像できた。濁った緑と茶色、それに黄土色。もしかしたら、不似合いに綺麗な藤色なんかも混じってる。たぶんそんなところだろう。


 ―――だったらさ。


 彼はくくく、と笑い声を立てる。


 ―――きっと俺の髪なんか、その中でひどく目立っているだろうさ。


 自分の真っ赤な真っ赤な髪は。

 彼は思わず笑いが止まらなくなりそうな自分を感じていた。

 だがその笑いは結局長くは続かなかった。後回しにすることにしたらしい。

 ぬるつく床。両手をついたら、甲の辺りにまで何やら水っぽい感触がある。


 コルネル中佐は重い身体をゆっくりと引き起こした。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?